第8話 妹の事情・5
今でも、鮮烈に憶えている。
あの日、病院の一室で、お兄ちゃんが発したひと言。
「えっと、……キミは、誰?」
あの時、アタシは何て答えればよかったのだろう?
例えばあの時、もしも――『恋人』って答えていたとしたら、なんて。
昔から、ずっと『妹』扱いでしかなかった。ううん、お兄ちゃんはアタシのことなんか目もくれなかった。どうでもいい空気みたいな存在だった。でも、今は。
ちょっぴり、ほんの少しでも、アタシのことを『女のコ』として意識してるみたい。
今のこんな暮らしがずっと続けばいい、と。
アタシは心の底から、そう願ってる。
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