第4話 妹の事情・1

 朝の食卓の風景。

 目の前には、お兄ちゃんが作った朝食メニューが用意されている。


 アタシは低血圧でボーっとしてる頭で、ぼんやりテーブルを見つめている。


「ほら、さっさと食べちゃえよ。今日のスクランブルエッグ、結構いい出来だぜ」


「……うっさい」


(ってか、朝からこんなに食べらんないし)


 急かしてくるお兄ちゃんを睨みつけて、舌打ちしかけたけど……


「ちょっと」


 ふと、面白いアイディアを思いついた。


「早く、食べさせてよ」


「……はい?」


 お兄ちゃんは怪訝そうに眉をひそめる。


「昨日、アタシのお風呂覗いたでしょ。その罰よ」

「って、おいぃぃ! ちょっと待て、あれはオマエがボディソープ切れたからって持ってこさせたんじゃねぇかっ」


 案の定、お兄ちゃんは全力でツッコんできた。プププ、からかいがいのあるヤツー。


「いいから。は・や・く」


 アタシが凄んでみせたら、しばらく葛藤していたお兄ちゃんはガックリと項垂れた。


(やったー、今日も大勝利♪)


 そんな、アタシとお兄ちゃんのふたりだけの時間は――


「おはよう、コウくん」


 空気を読まないバカ女の登場で、一瞬にして台無しになってしまった。





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