虚無を裂く者たち《セイラカの守護者》

エグジット

第1章

進化界セイラカ。無数の光の欠片が集まり創られた世界。その片隅に、鍛冶屋の村エキイェカは静かに佇んでいた。村には、若き戦闘士レイアサがいた。孤児として育った彼は、鍛冶屋の仕事をこなしながら、いつか訪れるであろう戦いの日に備えていた。


「おつかれ様っ」


夕暮れ時、鍛冶屋の炉の火が赤々と燃え上がる中、レイアサは汗を拭いながら、村長である鍛冶屋のマサタに声をかけた。マサタはニコニコと笑って、レイアサの頭を優しく撫でた。


「レイアサ、今日はよく働いたな。少し休んでいきなさい」


「はい、ありがとうございます!」


レイアサは、冷えた水を飲みながら、今日の出来事を思い出していた。鍛冶屋での仕事は、ただ鉄を叩くだけではない。一つ一つの道具に魂を込め、村人たちのために役立つものを作り出す。それは、レイアサにとって、戦うことと同じくらい大切なことだった。


そんなある日、村に異変が起こった。空に、黒い裂け目が現れ、そこから黒煙が溢れ出す。それは、虚無の獣ナヤメが放つ、生命を蝕む瘴気だった。村人たちは、恐怖に震えながら、レイアサに助けを求めた。


「レイアサ、頼む!この村を守ってくれ!」


マサタの切なる願いを胸に、レイアサは決意を新たにした。彼は、鍛冶屋で作った剣を手に、黒煙に向かって走り出した。


生命の光よ、傷を癒せYalan ruute, re riane eu yiita!」


レイアサは、治癒の呪文を唱え、傷ついた村人たちを癒やした。そして、黒煙に向かって、剣を振りかざした。


闇よ大地を裂け、混沌を呼び覚ませNayame, re teri, re reni eu kaose!」


破壊の呪文が、夜空を切り裂く。しかし、虚無の獣の力は強大だった。レイアサの攻撃は、黒煙をほんの一瞬だけ吹き飛ばすに過ぎなかった。


「まだ、終わらない!」


レイアサは、そう呟き、再び剣を構えた。彼の瞳には、決意の光が燃えていた。


レイアサは、ルマヤ語の力を信じている。古代の闇妖精ヤルケが、虚無の獣に対抗するために作った言葉。それは、治癒、破壊、創造の力を秘め、この世界を守るための鍵となるはずだ。


レイアサは、ルマヤ語の奥深くに秘められた力を引き出すため、精霊の森へと足を踏み入れた。そこで、彼は、ルマヤ語を司るという古代の樹と出会う。樹は、レイアサに語りかける。


「若き戦士よ、ルマヤ語の力は、あなたの心に宿っている。恐れることなく、その力を解放しなさい」


樹の言葉に励まされたレイアサは、再び村へと戻った。そして、虚無の獣との戦いに挑む。


新たな光よ、生命を誕生させよYalane yutale, re nasuke eu kooye!」


創造の呪文が、夜空に響き渡る。新たな光が生まれ、黒煙を押し返し、虚無の獣を退けた。


虚無の獣は、いったん姿を消した。しかし、レイアサは、これが終わりの始まりに過ぎないことを知っている。彼は、仲間と共に、進化界を守るための旅に出る決意を固めた。


「セイラカを守るために、俺は戦い続ける!」


レイアサの言葉は、夜空に響き渡り、新たな希望の光となった。

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