須寿宮真心(すずみや まなか)は二十歳になった女子大生。大学構内で、そこにはないはずの深い林と石碑を見かける。石碑に彫られた「箱山」の文字。祖父がいうには、以前に住んでいた家に「箱山には近づくべからず」という張り紙があったらしい。そこから少しずつ家族の不穏な歴史が詳らかになってくる。二十歳になって神隠しにあった祖先の女性。そしてその後、狂ったように山に桜の木を植え続けた女性の夫。恐れる真心の前に再び石碑は現れる。真心もまた神隠しに会うのか……?
ミステリー仕立てで真心が自分の運命を知っていく過程に好奇心がそそられる。過去へ遡り、呪いの元になった出来事を発見し、箱山の意味すること、そして箱山が呪いの空間になってからの最近の出来事、更には真心が知らなかった親戚や真心を助ける霊媒師など、話はかなりの広がりを持ってから、箱山の謎と呪いが無事に解かれて終結する。
これらがすべてきちんと語られるのが良い。長編で登場人物も多いのだが、それぞれを上手く紹介して、混乱させないところがすごい。最初の呪いが解けたと思っても、次の呪いがあったりして、ハラハラさせるのも上手いのだが、それぞれの呪いに関わってくる複数の人物や出来事が混乱せずに頭の中に残る。その構成力に驚かされる。これを学ぶためだけに読んでもいいくらい。
幾代にもわたる呪いや、将来の呪いを見越した準備、虫使い、お経の響きに聞き入る幽霊など、心霊関連の要素もきっちり抑えられている。応援マークを見ていると、途中で脱落してる人が結構いるので勿体ない。ぜひ最後まで読んでこの話を味わって欲しい。