結ばれたら終わりと分かっているから必死で引き延ばす俺達のラブコメ
@score
ミッション『卒業式の告白を無かったことにしろ』
00 プロローグ
Take1
暖かな風が吹いていた。
季節は三月の半ば。まだ肌寒い日が続くこともあるが、今日はどうやら陽気に恵まれたようで、桜のつぼみが今にも花開きそうなくらいだ。
そうやってぼんやりと、俺は景色を見る。ここは、校舎裏。植わっている桜以外は道路を隔てるフェンスくらいしかない。
いや違う。違うのだ。こうやって景色でも見て、誰に聞かせるでもない感想を繰り返し続けているのは、そうしないと、場の雰囲気に耐えられそうにないからだ。
「それで、なんなの?」
目の前の少女が言った。
今日は俺達の卒業式だ。
そして俺は、この校舎裏に、幼馴染を呼び出していた。
「葵、俺はお前が、好きだ」
俺は、震えそうな声を必死に抑えてそう言った。
俺の幼馴染、立花葵は俺の言葉を聞いて、一瞬だけ戸惑いを見せつつ、微笑んだ。
「そっか。それで?」
「それで?」
「私のことが好きだから、なんなの?」
言っている葵は、ニヤニヤとニコニコを隠そうともしない、ふやけた笑みを浮かべている。
俺は、ぐっと拳を握る。
好きだから、その先なんて決まっている。
「結婚しよう!」
「え、ちょっ、はやっ」
言ってから気付く。
違うよ! 結婚を前提に付き合ってくれだよ!
と訂正する間もなく、想定外の答えに顔を真っ赤にしていた葵が──
「……でも、いいよ」
こくんと、頷いた。
その瞬間、暖かな風が力強く吹いた。自然の全てが、俺達を祝福していた。
何の花かも知れない白い花びらが舞い散り、小鳥達は春の喜びを添えて歌う。
太陽は葵の少し眼付きが悪いが可憐な顔を煌々と照らし。
そして宇宙から飛来した隕石が、俺の脳天を貫いて爆ぜた。即死だった。
──────
「なんでだよ!!」
俺は自分の大声に驚くようにして跳ね起きた。
そして荒い呼吸を繰り返しつつ、少しずつ落ち着く。
俺が目を覚ましたのは、自分の部屋だ。死んだと思ったら別の世界で目覚めるとか、そういう異世界チックな出来事もなく、少し散らかっている自分の部屋で目を覚ました。
枕元のスマホに手を伸ばすと、日付は、先程の夢と同じ、卒業式の当日。それもまだ四時。
なんだ夢か。
俺は即座に状況を把握し、二度寝の態勢に入ろうとする。
そんな俺の脳内に直接、やかましい声が響いた。
『寝るなよ! また死にたいのか!?』
それが、俺達のラブコメの終わりの始まりであった。
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