不老不死になった死刑囚とおバカな悪魔
氷魚
プロローグ コロナ流行と不老不死
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は, 2019年12月初旬に, 中国の武漢市で第1例目の感染者が報告されてから, わずか数カ月ほどの間にパンデミックと言われる世界的な流行となった。
わが国においては, 2020年1月15日に最初の感染者が確認された後, 同年5月12日までに, 46都道府県において合計15,854人の感染者, 668人の死亡者が確認されている…。
得体の知れないウイルス感染症は人類に恐怖と脅威をもたらした。それにより、死が身近に感じるようになった国家のうちの一人がウイルス感染症に対抗する抗体を作り出せと全国の研究機関に命令を下した。
それにより、コロナワクチンが誕生し、人類はワクチン接種を行った。だが、ウイルス感染症の成長のスピードは凄まじく、ワクチン接種受けても感染する。
誰かが、言った。
「ただでさえ、日本は少子化が進み、高齢化社会だ。コロナという脅威で多くの命が奪われた。死ぬのが怖い。老いるのが怖い。どうしたらいいんだ」
国家のうちの一人が言った。
「死なない、老いない人間を作ればいいんだ」
その一言により、人類は不老不死を願うようになった。
わが国は少子化や高齢化が進んでおり、人口は減る一方だ。日本という国が沈没しないためには、死なない。すなわち、永遠の命を持てばいい。さすれば、日本は先進国の先を行くことになる。
さて、不老不死は可能なのか。
不老不死の薬を開発しようと国家が極秘のプロジェクトを始動させた。2075年のことだった。もちろん、そのプロジェクトは水面下で進められているので、国民は誰一人知らない。
不老不死の薬製造において、いくら失敗しても構わないという意味で、実験台として薬100人の死刑囚が選ばれた。死んだら、次の死刑囚を補充すればいい。皮肉ではあるが、この世から犯罪が消えることはない。それゆえ、わが国には多くの死刑囚が存在する。
表面上知られている死刑囚は100人ほどだが、それは偽りだ。国家にとって都合の悪い事件はいくらでもある。国民に知られてはならない。誰も知らない、誰にも知られることのないまま死刑執行された死刑囚は数多くいた。
公表されていない事件を起こした死刑囚を含むと500人もいる。
公表されていない死刑囚はこのプロジェクトの実験台としてもってこいのモルモットというわけだ。
非道的な実験だが、死んで当然の人間なのだから、国家は死刑囚がいくら死のうとも興味がなかった。国家の興味は不老不死の薬。それだけである。
実験は失敗が続き、多くの死刑囚の命が奪われていった…。
時代は2270年。プロジェクト始動から約195年が経ったころだった。
国内のあらゆる機械がAI化され、資料作成も車運転も整備も全てAIやロボットが担っていた。また、警備員も戦闘用ロボットが主となり、人類はより一層不老不死の薬開発に全力を注いだ。
そんな中、ある一人の死刑囚の体に変化が生じた。
不老不死の抗体ができたのだ。
世界で初めての不老不死となった死刑囚は、実験成功のご褒美として、死刑から解放された。死刑囚の体の中にできた抗体を取り出し、薬を製造し、販売しようと国家は計画を立てた。
果たして、不老不死は人類の進化をもたらすものなのか。あるいは退化をもたらすものなのか。
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