1
第1話
まず、彼を好きになった理由を聞いてほしい。
本当になんでもない日だった。
私、本宮 なかはこれといった特徴や個性などはなく、平凡な女子高生だ。更にいえば内気で目立たつことは嫌いで、あまり主張も出来ないと言ったまぁ、ちょっとウザったく思われるようなやつなのである。良くいえば控えめで大人しめな性格。悪くいえば...、やめておこうか。
そんな私でも好きな人はいる。いや、学生の時に出来ない方が難しいのでは?と思うほど人はいるのだ。逆に問いたい、好きにならないってのは自分の心が冷めきってるから?それとも精神年齢が低すぎてそういう対象に見れないから?
私もつい最近まではそんな感じだった。ちなみに後者である。
そしてそんな私が彼を好きになった理由だが、案外人を好きになる理由が単純過ぎて笑えるほどである。むしろ自分ってこんな単純だったなんて思ったほどだ。これからの人生のことがちょっと心配になったのは誰にも秘密である。
さて、前置きが長くなったが、彼を好きになってしまった理由は簡単。私に優しくしてくれたからである。
...理由が単純過ぎて馬鹿らしい?
んなもんこちとら理解してるわ。
だってよ?上記で説明したが私はあまり目立たつことはしたくない。変に注目浴びて平然とやっていける程の肝も座ってないし、そんなに顔立ちだっていいわけではないの。平々凡々が服を着て歩いてるような何処にでもいるようなのが私。
そんな私はあるイベントの実行委員に何故か選ばれてしまったの。誰も挙手する人がいないからってテキトーに決める先生で可笑しいと思う。その日の出席番号とか本当に意味が分からない。そんなことで引用するな、と言いたいが先生たちもイベントの準備もあるだろうから言えないが。
そして私ともう1人の実行委員が彼であった。この時は私、彼のことそんなに好きではなかった。彼の性格は私と真逆で、私が陰とすれば彼は陽。とにかく明るくてクラスの人気者。スクールカースト上位にいる存在だから。この時彼が実行委員になってから女子が感嘆したことは彼は知らないだろう。甘い顔立ちに女子が羨む程の透き通る肌。見目がいい上に愛想だって良いなんてモテる条件を満たしてるもんだから、そんな彼と私とじゃあ良くないって思う子がいたけど彼の一言で拒否しようにも出来なくなってしまったのよね。
彼、なんて言ったと思う?
「本宮さんと前から話してみたかったから、実行委員一緒になれて嬉しいな」
ですって。この一言の破壊力よ。
それを聞いた他の女の子は私を射殺せんばかりの視線を寄越すわよこすわ。あの時程胃が痛いなんて思わなかった。
もちろん私は胃を抑えながら愛想笑いしか出来なかったと記しとこう。
イベントの実行委員となればまず一からの制作で、企画から決めなくてはいけなかったからよく放課後や昼休みを使ってしてたの。私は部活に入ってなかったから、時間はあったが彼が部活に入っておりなかなか休みがなくて。もう1つモテる条件に加えると、球技をしてそうに見える彼だけど球技はからきしらしく、よく男女別の授業では慌てていたのをよく覚えていた。
そんな彼の部活動は弓道部であり、副主将を務めていた。だから毎回部活動に遅れるのはいただけないらしく、毎回申し訳なさそうにして部活動に行く彼に手を振り送り出していた。だからその度1人で決めて翌日に彼に報告をして、次にどうしていくから等を決めていたの。私彼のことは知らなかったし、関わりたくないとすら思ってたのか言っちゃったんだよね。
放課後は私1人でも大丈夫だから、部活に行っても大丈夫だよって。そしたらさ、
「俺って決められたことは曲げない主義なんだよね。なんかさ、中途半端で気持ち悪いじゃん。実行委員って2人でなってるのに、本宮さんにばかり押し付けたりするのってなんか嫌なんだ。だからさ、今までごめんね?なんとか明日からは一緒に出来るように説得してみせるから」
この一言で簡単に彼に落ちてしまった。
いつも彼って流されてるようなのか、そう仕向けているかのようで分からなかった。だって笑顔で周りの意見に流されて受け入れていたのを見ていたから。だから彼と実行委員って決まった時、押し付けられるか意見がなかなか決まらないだろうって。でも違った。今までの彼と反転した姿を見てあれ、イメージと違う?と思ったら彼のことが気になってしまい、そしてこの言葉。もう後の展開が分かるかもだけど、この日から私は彼のことが好きになってしまった。
彼のことが好きだが、特にこれといった特徴とかもない冴えない女が彼と付き合いたいなんて思わなかった。とりあえず、彼とのこの時間を大切にしたくて。心の底に終い、ソッと蓋をした。
彼を想う気持ちは楽しくて、暖かくて、それでいて幸せだった。だから想いを伝えることなく、期限付きのこの幸せを噛み締めることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます