中学受験 受験生の父親ブルース

@bentbean

第1話 埋める。

小学校5年生の夏、パー子のスケジュール。


月・水・金はN研。合間の火・木に授業の復習。カリキュラムテストがある時は土日に集中して母能研か父能研でテストの間違ったところを復習。


なかなかハードスケジュールのように見えるが、頑張っているのは親だけ。


しかも、自分は仕事もあれば、酒も飲む。そこら辺は普通の父よりはるかに不良で、平日に面倒見れない分(酒を飲んで帰る分)、土日に精力的にパー子に叩き込む。


なのに娘よ、なぜに君は覚えない…                                                                                                                                                                                                                


「日本で一番長い川が何で利根川なんだよ、昨日教えたのにテストで間違えやがって!」

うちの娘のいいところは、父がどんなに「バカっ!バカバカバカ!」と言ってもくじけないところではある。通常母はこれを言わないし、言えば「分かってたの~!だけど(以下クドクド言い分け)」となる。


 しかし父は言う。


 一方パー子は、父にいつの日か復讐を期しているせいか逆らわない。(復習なら死んでもいい)                          

 いつか刺されるのだろうが、成績が上がれば男子の本懐。つい「バカっ!バカバカバカ!」となる。(普通の子に言ってはいけないが、パー子はめげない)


 「12時間経つと忘れる脳みそなんか捨てちまえ!日本一長いのは、し・な・の・が・わ!」 


 父が仕事に疲れながらも脳内革命を起こすほどに自らも学んで、その上間違えるのは許せん! 

 しかし、「し・な・の・が・わ!」のあと、間髪いれずにパー子は応えた。

  「マジっすか?」(注:小学校5年♀)


 マジに決まってんだよ!

  小学校5年生の女の子のイメージは父の中では「ドラえもんのしずかちゃん」である。そのしずかちゃんが「マジっすか?」である。


 コギャルチックなしずかちゃんと、ドラ焼きを恐喝するドラえもんと、鼻には既に穴があるのにさらに無駄にピアスをするのび太。父の頭の中で「ドラえもん21世紀バージョン」がグルグル。


 天の慟哭地の叫び。父はこのとき「埋める」と決意したのであった。


 とりあえず受験、合格発表までは待つ。その後は「埋める」。

 覚悟しておけ、パー子よ。

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