第201話山狩り1


「高尾山にモンスターが?」

「そう、何人かが見たらしいわ。」


 華が転職をしてからしばらくたったある日、配信を終えて素材の換金を待っていると華がネットニュースを彰悟に見せた。


「えぇ~っと…『高尾山のふもと近付くをジョギングしていた30代の男性が、高尾山を上っていくヒト型のオオカミを発見し、通報があった。調べてみると他にも60代の女性や地元の学生も同様な通報をしていることが分かった。』か。もしこのモンスターがコボルトならすぐに倒されるだろうけど人狼とかだったら厄介だろうな。」

「そうね、人狼だったらコボルトとは比べられない位強いし喋りはしないけど人化もするから見つけるのから大変そう。」


 彰悟が華に見せてもらったネットニュースを自分のスマホで映しながら華と話していると、


「119番でお待ちの方~!」

「お、呼ばれたな。」

「いきましょ。」


 受付で呼ばれた為、この話は自然になくなっていったのだった。


「あれ?ねぇ、この前のニュース覚えてる?」

「この前……あー、高尾山にモンスターが出たってやつか。」

「そう、それだけどいたのはコボルトじゃなくて人狼だったみたいよ、それも群れ。」

「うわ、それでどうなったの?」

「ちょっと待って、いま調べるわ。」


 ニュースの話をした次の週、前回と同様に素材の換金を待っていると華が先週のニュースの続きを見つけた。


「えぇっと……あったわ。…どうやら五組の開拓者チームが高尾山にいたらしいけどみんな撃退されたみたいよ。」

「人狼はどれぐらいの群れか分かる?」

「う~ん、分からないけど五組の開拓者チーム全てに十匹の人狼が出たみたいだから少なくとも五十匹はいるかな。」

「それはまた結構な群れだな。」


 高尾山は東京にあるため、下手をすれば人狼が暴れたり、自分たちが討伐にいかなくてはならなくなる可能性を感じた彰悟は、華と一緒にこのニュースを調べる事にした。


「へぇ…『今回の件を踏まえて行政と開拓者協会は高尾山への接近禁止及びに近隣住民の避難を開始した。』だって。」

「やっと帰ってこれたのにまた避難なんてかわいそうね。」


 どうやら高尾山は人狼が完全に掌握しているようで、五組の開拓者チームがやられた後に派遣された開拓者チームの中には人狼に会うことなく人狼の設置した罠によって倒された開拓者チームもいるようだった。


「それにしてもどうして今まで姿を現さなかったのに急に現れたのかしらね?」

「今までは力をためてたんだろうな。だからいきなり開拓者たちから襲撃を受けても五十匹の人狼が戦いにでれたんだろ。」

「なるほど…てことはまだまだ戦力を隠してるかもしれないってこと?」

「だろうね、それにそれだけの群れだとしたら下手したら人狼の亜種やら上位種やらが隠れてるかもしれないのが厄介だな。」

「208番でお待ちの方~!」

「あ、呼ばれた。」


 二人で高尾山の事を調べていると素材の換金が終わったため、その日はこれ以上華すことなく解散した。


『では次のニュースです。現在侵入を禁止されている高尾山ですが今日、人狼たちの拠点が見つかりました。』


 彰悟が家に帰ると父親が見ていたニュースに高尾山の景色が映されていた。

 そこには、木が切られてできた広場と切った木でできた家と木でできた城壁が見えていた。


「ただいま~って高尾山じゃん。」

「お帰り。なんだ、知ってるのか。」

「うん、でも一般人が知ってる情報しか知らないよ。」


 彰悟が父親と話ながらテレビを見ていると、そこには拠点で生活している人狼たちが映っていた。


「うわ~、結構人狼が多いな~。ってか子供か?繁殖までしてるとなると早く倒さなきゃ定住されるかもな。」

「それは…かなり不味いだろうな。」

「それにニュースでこんな映像をやったら自称動物保護団体とかが騒ぎそうで厄介だよ。」

「そんなやつらがいるのか?」

「うん、いるよ。」

「開拓者も大変なんだな。」


 人狼たちの拠点の映像を見ながら話をしていた彰悟と父親だったが、夕食を食べるために彰悟は話をして区切って着替える為に部屋に向かうのだった。


「ん?メールが来てるな。」


 部屋に入った彰悟が着替えながらふとスマホをみると一通のメールが来ていた。


(えぇっと…誰からのメールかな……うわ、トメさんからのメールか、てことは人狼関係の話かもな~。)


 着替えを終わらせた彰悟がリビングに向かいながらメールの送り主を見ると、トメからのメールだった。

 メールの送り主を見た彰悟が嫌な予感を感じながらメールを開くと、


『スライム亜種ぶりだね。…実は人狼関係の事で相談したいことがあるんだけど明日事務所まで来てくれないかい?』


 彰悟の想像通り人狼関係のメールが来ていた彰悟は、とりあえず話を聞くことにした。


「はぁ…。スライムの時みたいに安いお金で雇われるんだとしたら断らないとな…。」


 彰悟が事務所に入ると待っていたかのように職員がやってくると彰悟を所長室に案内した。


「失礼します。」

「座りな。」


 彰悟が部屋に入ると何かの紙を見ていたトメは紙をしまって彰悟の向かいに座った。


「…ふぅ~、最近高尾山が騒がしいのは知ってるね?」

「はい、人狼が集落を作ってるんですよね。」

「そうだよ。それであんたに人狼の討伐を手伝って欲しいんだよ。」


 トメから想像通りの要求を受けた彰悟は、


「あの、それって報酬はどうなってるんですか?」


 と一番気になっていることを聞いた。


「あぁ、前回の事があって気になってるんだったら大丈夫だよ。今回は人狼が強いことと前回とはちがって緊急性があることから人狼一体500万の報酬を払うことになってるよ。」

「500万ですか。」

「今回は地上だからあんたのとこのツムギがいれば楽勝な仕事だろ?」

「まぁ…、それはそうですけど…。」


 なぜかトメが急いで自分を討伐する部隊にひきいれようとしているように感じた彰悟は、


「あの、なんでそんなに討伐の値段が高いんですか?確かに緊急性はありますが普段の人狼って確か毛皮が300万とかですよね?ほぼ倍額になってるじゃないですか。」


 と気になった点をトメに質問した。


「…動物の保護団体が動き出したんだよ。」

「やっぱり動きだしましたか。」

「それもちゃんと許可がおりてるペットショップに襲撃を仕掛けるような過激な団体がね。今は規制の境界線でデモをしてるだけだけどいつ動き出すか分かったもんじゃないね。」

「人間相手じゃ開拓者協会はなにもできませんもんね。」

「しかもたちの悪いことに人狼がゴブリンとかコボルトとはちがって完全なヒト型になれるからって人権とか平等を唱う集団まで動きを見せはじめてね、既に数人の国会議員が金で抱きこめられたみたいなんだよ。」

「そんな…相手はモンスターなんですよ!?」

「そんなの関係ないのさ。実際に危ない目にあわなきゃ気付かないもんなんだ。」

「いや…だって【竜渡り】があって避難したばっかでしょ!?」

「団体は被害にあってない人しか残ってないし国会議員はすぐに避難したから危ない目にあってないんだよ。だいたいやつらの真の目的は金儲けなんだ、止まることはないよ。」

「はぁ……。」

「あんたみたいな子供にこんなことを頼まなきゃいけないってのはこっちも申し訳ないとおもってるよ。」

「分かりました。それじゃあ華とも連絡を取って相談してから決めます。」

「悪いね、頼んだよ。」


 トメからいろいろな情報を聞いた彰悟は、華と相談するといってその日は家に帰るのだった。

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