夜の横浜・福富町から始まる、痛いほどの孤独と偽りの温もり。本作は、性同一性障害を抱える主人公・ミキの剥き出しの葛藤を、圧倒的なリアリティと繊細な筆致で描いた傑作ドラマである。朝の冷気の中で零れ落ちる「帰ろう」という関西弁の響きが、読者の胸を激しく締め付ける。目を背けたくなるほどの夜の暗闇から、新幹線で過去へと向かおうとする一筋の光への転換が見事。ただのエンターテインメントの枠を超え、一人の人間が生きるための「居場所」を探す痛切な旅路が、ここから始まる。