第12話 公平?
「……あの、
「ん、どうしたの
「……あの、どうして私達はここにいるのでしょう?」
「あっ、もしかしてほんとは好きじゃなかった? こういうとこ」
「あっ、いえそういうわけではなく……」
それから、数日経た放課後のこと。
私の問いに、少しばかり申し訳なさそうに尋ね返す浦崎先輩。……いや、そういうわけじゃないんだけど。ただ、なんでかなぁと思っただけで。
さて、私達がいるのは学校から20分ほどの所に位置するアミューズメント施設――その三階に在する、広々としたボーリング場で。
『――よし、今日はボーリングに行こう!』
『…………へっ?』
数十分ほど前のこと。
帰り道、他愛もない会話を交わしていた中ふとそんなことを言い放つ浦崎先輩。……いや、まあ遊びに行くのは今日に限ったことじゃないし、別に不思議なこともないけど……でも、なんで急に――
「……あの、やっぱり嫌だった?」
すると、私の様子から判断したのか、改めてそう問い掛ける先輩。珍しく不安そうなその表情に、私は――
「……いえ、とんでもないです。ほんとに久しぶりですが、だからこそ楽しみです」
「……そっか、良かった」
そう、笑って伝える。すると、安堵した様子で答える浦崎先輩。……まあ、なんでも良いか。実際、楽しみといえば楽しみだし。
「――ところで、優月。さっき久しぶりって言ってたけど、実際どのくらい行ってないの?」
「……えっと、そうですね……かれこれ、八年くらいでしょうか」
「わぁ、それはほんとに御無沙汰だね」
入念な準備運動をしつつ、ふとそう尋ねる先輩に記憶を辿りつつ答える私。確か……九歳の夏休み、両親に連れて行ってもらったのが最後で。……そう、あれが最後で――
「……優月?」
「……へっ? ああいえ何でも!」
「……そう? だったら良いけど」
すると、私の様子に何かしら察したのだろう、少し心配そうに尋ねる先輩。そんな彼女に慌てて答え、ブンブンと頭を振る。……うん、今は切り替えなきゃ!
「……さて、さっそく始めようかなと思うけど――やっぱり、私達と言えば勝負だよね?」
「……まあ、やっぱりそうなりますよね」
それからややあって、いつもの快活な笑顔でそう問い掛ける浦崎先輩。まあ、さっそくというわりにはわりと長いこと準備してた気もするけど、それはともあれ……うん、やっぱりそうなるよね。ただ――
「ああ、大丈夫だよ優月。流石に、そんだけ御無沙汰の優月に純粋なスコア勝負はしないから。ちゃんと相応のハンデはつけるよ。然るべき差はつけてこそ、公平ってものだからね」
「……む、言いますね」
そう、何とも余裕の窺える笑みで告げる先輩。ただ、少し悔しくはあるものの、彼女の言葉を覆すほどの実力がないであろうこともまた事実で――
「……ん?」
そんな私の思考が、ピタリと止まる。何やら、徐に鞄から何かを取り出さんとする先輩の姿が映ったから。まあ、それは良いのだけど……けど、そう言えば普段あったっけ? あんな鞄。
すると、私の様子から察したのか、そんな疑問に答えるように彼女は口を開いた。
「ああ、これ? もちろん、マイボールだよ」
「いやずるくない!?」
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