第4話:ブリジットの夢

「……ネオン様~、私はここにおります~。どうぞ捕まえてくださいませ~」

「ははは、待ってくれ~、僕の大事なブリジット~」


 すっかり豊かになった領地で、ブリジットはネオンに追いかけられる。

 荒れ果てた飛び地は緑があふれ、美しい草花が咲き誇り、貴重な作物がいくつも輝き、まるで天国かと思うほど繁栄していた。

 だが、いるべき領民は誰も彼も一人もいない。

 正真正銘、ブリジットと彼女が愛するネオンの二人っきりだ。


 ここは彼女の夢の中。

 全てが思い通りになる自由の世界。

 ブリジットは連日、ネオンとの愛を深めるキラキラしたドリームを思い描いていた。

 飛び地に来てからは匂いを嗅ぎながら触れ合っているので、より鮮明な夢を見れている。

 夢の中のブリジットは敢えて捕まりそうになっては逃げを繰り返し後、大きな木の陰に隠れた。

 最初は楽しい気持ちだったものの、徐々に不安が生まれてくる。


(思いの外森の深くまで来てしまったけど、ネオン様は見つけてくださるかな……)


 実際は家から10mも離れていない。

 ドキドキと待つ中、後ろからあの声を聞いた瞬間、ブリジットの心臓はトクンッと明るく脈打った。


「こんなところに隠れていたんだね。僕の子猫ちゃん。勝手にいなくなっちゃダメじゃないか。君の行方を想って、僕は胸が張り裂けてしまったよ。この傷ついた胸を癒やしてくれるのは……ブリジットしかいない」

「ネオン様ああああ!」


 夢の中のネオンはだいぶキザなセリフを言うが、ブリジットはときめきっぱなしだった。

 そっと手を握られ、さらに胸がときめく。


「さあ、僕の手を取って。一緒に愛の巣に帰ろう、僕の大事な子猫ちゃん。たっぷり可愛がってあげるからね」

「ああ、ネオン様……このブリジット、今が一番幸せでございます」

「……いや、違うよ」

「えっ……?」


 違うと言われ、ブリジットの心臓は今度はドキリと鼓動した。

 打って変わって、全身の血がひやりと冷たくなる。


(もしかして、お慕いするのがご迷惑だったんじゃ……)

 

 そう不安に感じたとき、これ以上ないほど優しくてかっこいい笑顔で言われた。

 

「僕たちの幸せは常に一番じゃないか」

「ネオン様ああああ!」

 

 大好きな主で旦那様に抱きつく。

 家のベッドで、ブリジットは嬉しさと喜びで締まりのない寝顔となるが、本人もネオンも知らないのであった。


(ずっと一緒にいましょうね……ネオン様。むふふふふふ……)


 幸せな気持ちで、ブリジットは今日も愛するネオンとの夢を楽しむ。

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