第16話 私の返事は決まっている


 俺が内山さんとキスする直前に、天ノ川さんが現れた。


 

 突然、出現した彼女に驚き、俺が動きを止めていると……。


「申し訳ありません。……お邪魔をしてしまったようですね。────どうか、私の事はお気になさらず、逢瀬の続きをなさって下さいませ」


 天ノ川さんは、キスの続きを促してきた。



 ……いや、そんなこと言われても、俺はこういうことに慣れていない。

 人に見られながらとなると、ハードルがさらに上がってしまう。




 それに……。

 夢を見ていたのでなければ、俺は天ノ川さんとキスをしている。


 彼女の方から積極的に、俺にキスをしてきた。

 天ノ川さんは、俺の事が好き……なのだろう。


 そんな彼女の前で、他の女の子とキスをする……。


 ────いいのか、これ?



 とにかく、内山さんとキスするにしても、二人きりの場所でないと……。


 俺は仕切り直そうと、内山さんから顔を離す。



 だが内山さんは、俺を放すまいと、がっしりと抱き付いてきた。


「池野君……。今ここで、キスしてください! 天ノ川さんの、目の前で!!」


 そう言ってから、再び、目を閉じる。



 ……女の子が、ここまでしているんだ。


 ここから先延ばしには出来ないし、したくもない。



 俺は天ノ川さんの見ている前で、クラスの地味な女子、内山さんと唇を合わせた。



 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 私は幼馴染を起こしに行き、そこで、襲われてキスされた。


 ────それが、今朝の出来事だ。



 それから登校中に、クラスメイトの森山に会い、大事な話があるとか、なんとか言われて、放課後に話を聞くため、時間を取ることになっていた。



 そして、放課後────


 私は森山と一緒に、学校の中庭に来ていた。

 ここは昼休みは生徒で賑わうが、放課後は人気が無くなる。


 『大切な話』とやらを聞くのには、ちょうど良い場所なのだ。




 早く話を聞いて、断って、さっさと帰ろう。


 こいつの話を聞く前から、私はそう思っていた。



 森山の大切な話というのは、まあ……『告白』なのだろうと、当たりを付けている。


 こいつは、どうやら、私の事が好きだったようだ。  

 ここまでの、この一連の流れなら、誰でも、そう予想すると思う。




 けれど、申し訳ないけれど──

 私はコイツの気持ちに、応えてやることは出来ない。


 ────好きな人が、出来てしまったからだ。



 まあ、私に好きな相手がいなかったとしても、コイツと付き合うことは無かったと思う。



 悪い奴ではない、と思う。

 けれど、それは『表面的に仲良くしている』範囲でのことだ。



 誰だって、人に良く思われたいと思っている。

 だから、教室では基本的に、『良い人』として振舞うものだ。


 ある程度、社交的な者ならば、皆そうだ。けれど──

 より親密に付き合うようになれば、嫌なところも見えてくるだろう。



 ────私はそんな風に、考えている。


 だから、表面的な付き合いをしている相手から告白されたとしても、ときめくよりも先に、『面倒臭いな』と感じてしまうのだ。 


 告白される前から、私の返事は決まっている。

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