第13話
柚菜も混ざることになったので、文芸部特別班の活動日を正式に決めた。毎週火曜日と木曜日。時間は一時間くらい。何かあれば他の日にも集まる。これは、セカイに巻き込まれたらその日も活動日だったって話にするため。斉藤センパイがどう話したのかは分からないが、柚菜も部員ではないが部活動に参加している扱いになるそうだ。少なくとも、学校公式には合唱部をサボっているという評価にはならない。柚菜はどっちでも良さそうだったけど、センパイが言うにはこういうのも受験の時に影響するかもしれないから大事、だそうだ。そういう発想は無かった。さすが受験生。
柚菜はなんだかんだ楽しそうに作業している。斉藤センパイと一緒に何かできるのが嬉しいらしい。いちいち髪型やらリップやらネイルやら、オレじゃ絶対気付かないようなことでもセンパイはよく見ていて褒める。そういうところが柚菜によると『やっぱさー、イイよねー』らしい。オレはというと、特に何も無く淡々と作業を進めている。というか女子二人が女の世界で楽しくやっていて、オレは完全に蚊帳の外だ。おかげでパソコンの扱いとラベルの検索は早くなった。職人と呼んでくれ。セカイに迷い込むでもなく、そんな日々が二週間ほど続いた。
衣替えが終わり、蒸し暑い日と雨の日が入り混じるようになった頃。図書の整理も半分ほど終わり、文芸部特別班の活動に勉強会が加わることになった。言い出したのは柚菜だ。甘えた様子でせっかくだから凛音先輩に勉強見てほしいーとか言い出したら、センパイも軽い調子でオッケーとか言って図書室の机に教科書を広げだした。オレは相変わらず置いてけぼり。いいけどさ。柚菜が席を立ったタイミングで、こっそり斉藤センパイに耳打ちする。
「あの、センパイ。迷惑だったら言った方がいいですよ?あいつ、わりと調子に乗るから」
「んー?全然いいよ?手伝ってもらってるんだしこれくらい」
「なら、いいすけど」
「柊真も一緒にどう?中二の範囲だったら何でも聞いて」
「はあ」
オレがちょっと釈然としない表情をしていたのか、斉藤センパイがハッとしたように付け加えた。
「大丈夫、取らないから」
「何の話すか」
「かわいいもんね、柚菜。うんうん」
「前にも言いましたけど、百パー違いますんで。そういうんじゃないんで」
「へー」
ニヨニヨしているセンパイは、オレの話なんて聞いちゃいなそうだ。そうこうしているうちに柚菜が戻ってきて、変なところで話が宙ぶらりんになってしまった。センパイとは一度きっちり話つけておいた方が良さそうだな……。
ちなみに勉強会には結局オレも参加するようになった。斉藤センパイ、教え方が分かりやすいし頭が良い。志望校を聞いたらサラッと学区トップの公立校の名前が返ってきた。なんかちょっと女子がキャーキャー言う気持ちが分かってきた気がする。
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