神慟悪滅バイブレード

あにうえ

旅勃ち①

 前回までのあらすじ


 これが一話目なので、前回までのあらすじはない。



  *



 地球から、何万光年も離れた彼方。

 宇宙の果てに、誰も知らないし知りたくもない、一際無駄に眩い輝きを放つ星がある。

 それは、あらゆる天文学的理論を無視するかのように黄金の光を放ち続ける謎多き星━━


 惑星『金球きんたま』。


 金星よりも、月よりも明るく輝いている。

 なぜなら、この星は生まれながらにして『キンタマキラキラギンギンちから』 に満ち溢れているからだ。


 星の内核、そして星に生きとし生けるものすべてから発せられるその不可思議なエネルギーによって輝き、夜の帳が落ちるまで、まるで恒星のように自ら光を放つ。


 この星に生まれる者たちは、すべて『男』である。

 ここには女性という概念はなく、それを疑問に思う者すら存在しない。

 なぜなら、男と男の間に子供が生まれることが、この世界のことわりだからだ。


 しかし、男には二種類の生き方があり、普通の男同士で子を成すことは適わない。


 ひとつは、純粋な『男』 。

 彼らは逞しく、勇ましく、金球の繁栄を支える存在。

 骨格がしっかりしており、肩幅が広い。

 筋肉が密に詰まっており、肉体は硬く、鋼のような強靭さを持つ。

 彼らは日々、キンタマキラキラギンギン力を高め、次世代へと繋ぐ役割を担っている。


 もうひとつは、『男の娘』 。

 骨格は細く、しなやかで滑らかな曲線を持つ。

 筋肉のつき方は繊細で、体が柔らかい。

 普通の男に比べるとキンタマギラギラギンギン力は見劣りする者が多い。

 しかしこの概念は、単純な個性ではない。

 金球において男の娘は神聖なる存在であり、新たな命を生み出す重要な存在とされている。


 男と、男の娘がつがいになり、キンタマキラキラギンギン力を通じて新たな命を生み出す。

 生まれる子供は常に男であり、それが何千年も何万年も昔、遥か古の時代より続いてきた。

 男同士が愛を交わし、絆を結び、その力が新たな命を誕生させる。

 それはあまりにも自然なことであり、誰も疑問に思うことすらない。


 しかし、その秩序が今、崩れつつあった。

 夜の闇に紛れ、『奴ら』がやってくるからだ。


 Messenger of Gents Killer━━通称『メスガキ』。


 日本語のような専門用語に混じって、とうとう英語のようなものまで出てきてしまった。

 しかし、金球は地球と極めて近い進化を遂げた星であるので、それは至極当然のことである。


 メスガキは金球の住人たちとは異質な存在だった。

 突如として現れ、「ざぁ〜こ♡」 という奇妙な鳴き声と共に、男たちの力を吸い取る。


 メスガキの姿は、男の娘に似せてはいるが、明らかに体つきが異なる。男とは比べ物にならないほど滑らかで、曲線美が際立っている。胸には謎の二つの膨らみがあり、未知の物体が男たちの思考を支配する。

 腰から下のラインはまるで黄金の光を反射するかのように輝き、それが男たちの目を引きつける。

 それに布面積が極端に少ない妖艶な衣装を纏っている。その姿は見る者を一瞬で魅了し、体の一部(ち◯ちん)を硬直させ動きを封じてしまう。


 そして、致命的なのがその声と視線だ。

「ざぁ〜こ♡」という甘美な、しかし冷たい響きの声。

 それに加え、挑発的な眼差しが男たちの心を惑わし、体の一部(ちん◯ん)が爆発寸前に膨れ上がる。


 他にも様々な特徴があるのだが、ギリギリアウトな気がするのでこれ以上の描写をすることは出来ない。非常に残念だ。

 というか、現段階ですら『この表現はセーフなのか? 後で見たら小説が削除されてないか?』という疑問が作者の頭にチラついて離れない。


 このように、メスガキは金球の男たちのキンタマキラキラギンギン力を奪うことに特化した、あまりにも恐るべき存在だった。


 この惑星の住人たちは、夜が訪れるたびに家の扉を固く閉ざし、声すら潜めてやり過ごす。

 しかし、それでも完全に防ぎきれるわけではなかった。

 ━━今宵もまた、メスガキの影が迫っている。



 そしてこの星に生まれた少年、ティンコ=デカスギテ=コテイシサンゼーは、壮絶な運命の渦に巻き込まれようとしていた。



  *



 ティンコ=デカスギテ=コテイシサンゼーは転生者である。


 彼は前世、地球に生きるただの男だった。

 特別な力も、英雄的な資質も持たない、ごく一般的なサラリーマン。

 彼が唯一持っていたものは、とある趣味嗜好だけある。


 それは、変身ヒロインものだった。

 いや、正確に言えば『変身ヒロインが大衆の前で変身強制解除され、身バレしてしまう展開』 だった。

 尚、これはティンコの性癖であり、作者とは何の関係もないことをここに記してておく。


 ある日、彼は極上の薄い本えろどうじんを手にしていた。

 原作絵じゃないと至ることが出来ない(まあ、やるけどね)という彼にとって、オリジナルの変身ヒロインものというのは大変変態な貴重品だった。

 誰も入る心配がない一人暮らしの部屋、快適な空調、枕元のティッシュ、準備は完璧。

 ページを捲りながら、ヒロインに迫る敵幹部と己の分身を鼓舞する。


 ━━がんばれ……♡ がんばれ……♡


 好みの絵柄に、絶好のシチュエーション。過去最高の胸の高鳴り。彼の右腕は光と化した。


 しかし、悲劇は起きた。

 敵幹部の攻撃で変身が解け、衣服がボロボロになってしまったヒロインの股間には━━ちんち◯が生えていたのだ。


『うわああああああああああ!!!』


 そうしてなんやかんやあって、前世のティンコは自慰行為で命を落とした。

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