トラックに轢かれて異世界転生、からの勇者、って普通だよね?

平行宇宙

第1話

    ずるいよ


 少女は胸の中でつぶやく。


 視線の先には、同級生たちと、彼らに囲まれる一人の少年。


   ずるい


 その少年はどう見ても特別で・・・

 あそこの位置は私のものなのに・・・

 なんで、あの子があそこにいるの?

 あれは私の場所なのに・・・

 特別な子は、私だけでいいのに・・・



 ただでさえ、高2にはがいる。

 町中の話題をかっさらった、3ヶ月程前の事件。

 トラックに轢かれた、からの、神隠し。

 消えた時期はバラバラで、だけど彼らは一緒に戻ってきて・・・・


 『トラックに轢かれたら、白い空間にいて、それから異世界で勇者、やってました。』

 そう口々に言う3人。



 なんで、私じゃないんだろう。

 彼らを見た最初の感想はそれだった。


 私だって、トラックに轢かれたら異世界行って勇者になれるもん。

 あの3人となら、勝負できる。ううん。私はかわいいし、彼らと違って町の子で垢抜けてるから、もっともっと特別になれる。


 そんな風に思った。


 なのに。


   ずるいよ・・・


 あの子は特別。

 トラックに轢かれなくても

 異世界に行かなくても

 ましては勇者になんかならなくたって


 僕は特別です、って全身で叫んでいる


 私には、そう見えて・・・


 ずるい


 (あの子は嫌いだ。)


 少女、こと、今宮恭子は、心の中で、そうつぶやいたのだった。

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