第19話:罰(その11)「王女の失態を語らせる夜、奉仕としての償い」

ムーンベリクの王女は、寝室のドアを開けるたびに胸が締め付けられるような恐怖を覚えていた。夜が更けるたびに彼女はサマルティアの王子に呼び出され、「告解」と称した儀式に臨むことを強要されていた。


王子はいつものように寝室の椅子にゆったりと腰掛け、彼女を冷たい視線で見つめていた。


「さあ、今日一日で僕を失望させた行動を話せ。」


その冷酷な声に、王女の体が震え、頭を下げたまま小さな声で答える。


「……私は、特に……何も……。」


その言葉が終わると同時に、王子が机の上の水晶玉に手を伸ばした。


「何もない?それが本当のつもりか?」


王女の顔が青ざめ、全身が震える。


「お前の嘘を見抜けないと思っているのか?この水晶玉には、お前の全てが記録されている。」


彼は指先で水晶玉を転がしながら、不気味な笑みを浮かべた。

王子の指先が転がす水晶玉は、当然ただの装飾品ではなかった。

それは王女の行動を24時間監視し、彼女の言動や仕草の一つひとつを映し出す魔道具であった。

王女がいつ、誰と、どんな会話を交わしたのか──それらすべてが、水晶玉の中に刻まれているのだ。


「今日、お前は侍女たちと話していただろう。その時、主人である僕を立てる言葉を一言も出さなかったな。それが失望ではないとでも言うのか?」


王子の声には冷たく鋭い棘があった。

この世界、この時代では、王族に仕える者は常に主人への忠誠を示し、その威光を称えるのが常識だった。

王妃となる者が侍女たちの前で主人を讃えぬことは、ただの無作法ではなく、主従の秩序を乱す背信行為とみなされるのだ。


王女とローランシアの王子との不貞が発覚する前は、夫であるサマルティアの王子がこんな些細なことで彼女を咎めることはなかった。

彼は王女を愛し、疑うことすらしなかったのだ。


だが今は違う。

彼の言葉の端々にある冷たさは、かつての信頼が崩れ去った証だった。

王女の言動の一つひとつが監視され、些細なことでも責められるようになったのは、彼が彼女を信じられなくなったからだ。


そして、それを招いたのは他ならぬ自分自身なのだと痛感した瞬間、王女の目に涙が滲んだ。


「……それは……無意識で……。」


「無意識だと?それが免罪符になるとでも思っているのか?」


王子は冷たい声で続け、さらに追い詰めた。


「他にもあるな。僕に対して心から尽くすことを忘れていた瞬間が今日一日で何度あった?」


王女は涙を流しながら俯き、震える声で呟いた。


「……申し訳ありません……私は……。」


「謝罪ではなく、具体的に言え。」


王子の冷酷な命令に、王女は震える声で応えた。


「……私は、侍女と話している間、王子様のことを考えていませんでした……それが失礼だと分かっています……。」


「他には?」


「……お食事の準備を命じられた時、少しだけ……王子様への感謝を忘れていました……。」


王子は満足げに笑みを浮かべた。


王子は冷酷な笑みを浮かべながら、机の前で水晶玉を転がしていた。その冷たい視線が王女を射抜く。


「さて、お前が今日僕を失望させた行動を言ったな。その内容は十分だったか?」


王女は涙に濡れた顔を俯かせながら、かすれた声で答えた。


「……申し訳ありません……それが全てです……。」


「では次だ。お前が僕をどれくらい失望させたのか、自分で評価してみろ。」


その言葉に、王女は一瞬顔を上げ、困惑の表情を浮かべた。


「……ど、どれくらい……?」


「そうだ。例えば、少し失望させただけなら、罰も軽い。しかし、お前の行いが重大な失望をもたらしたなら、それ相応の罰が必要になるだろう?」


王子の言葉は冷酷で、王女を追い詰めるようだった。彼女は震える声で呟いた。


「……私は……とても……申し訳ないことをしました……。」


その声に、王子は満足げに笑いながら頷いた。


「ならば、その罪を償うためにどうすればいいか、自分で考えろ。そして、僕に奉仕してみせろ。」


王女は震えながら膝をつき、涙を拭うこともできずに言葉を紡いだ。


「……王子様の疲れを癒やすために……全力で尽くします……。」


「具体的にだ。何をどうするのか、はっきり言え。」


王子の命令に、王女は嗚咽を漏らしながら、羞恥に震えつつ続けた。


「……私は……王子様のお身体に触れ……心を込めて癒やします……。」


「それだけか?お前が失望させた分には到底及ばないな。」


王女の顔が羞恥で赤く染まり、彼女の言葉が途切れた。王子はさらに冷酷に追い打ちをかけた。


「もっとだ。お前の罪を本当に償いたいなら、自分から進んで奉仕する姿勢を見せるべきだろう。」


王女は涙を流しながら、震える声で言葉を絞り出した。


「……私は……すべてを捧げて……王子様にお許しをいただけるまで……お仕えします……。」


王女はまるで乞食が哀れみを求めるように首を下げ、両手を合わせながら恭しく王子に近づく。


「…失礼します…。」


耳まで真っ赤に染め上げ、王子のベルトに手をかける。

震える指先が革を外し、金具が小さく鳴った。


王族に生まれた淑女が決してするはずのない行為。

けれど、今の彼女に拒むことは許されていなかった。


静寂の中、湿った音が小さく響く。


「……んっ……」


自分の口の中に広がる熱に、王女の喉がわずかに震えた。


王子は無言のまま、椅子に身を預ける。

彼の指が王女の髪をゆるく撫でるたびに、心の奥に冷たい感覚が広がった。


時間が経つほどに、王子の呼吸がわずかに乱れる。

それは支配する者としての冷酷な余裕を漂わせながらも、確かな昂ぶりを感じさせるものだった。


「……そうだ、それでいい……。」


低く落ち着いた声が頭上から降りてくる。

その一言に、王女は全身が震えそうになるのを必死に堪えた。


口の中に広がる感触が、次第に強さを増していく。

彼の指が髪を軽く引き寄せるたび、逃れられない事実を突きつけられているようだった。


心の中では何度も叫びたい衝動が駆け巡る。


(やめて……こんなの……。)


けれど、声に出すことは許されなかった。


やがて、王子の喉から低い息が漏れる。

次の瞬間、熱が弾ける感覚が口内を満たした。


「……全部、飲み込め。」


鋭い命令が響く。

王女の喉が小さく震えた。

全身が屈辱に焼かれるような感覚の中、それでも彼女は、逃げることも抗うこともできなかった。


涙を拭うことも許されないまま、王女は震える唇を押さえながら、ただ静かに息を整えた。


行為が終わると、王子は冷酷な笑みを浮かべながら言った。


「今日の罰はこれで終わりだ。だが、明日もお前が僕を失望させたらどうなるか分かっているな?」


王女は涙を拭い、口に含まれた違和感を精一杯飲み込みながら、震える声で答えた。


「……はい……二度とこのようなことがないようにいたします……。」


「二度と?お前がそれを守れるとでも思うのか?僕はお前の全てを監視している。失望は許されない。」


その言葉に、王女の心は再び絶望で締め付けられ、涙が止まらなかった。

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