紅の復讐者
灰都
紅の復讐者
血しぶきの飛んでいる赤レンガの壁をさらに赤く、斜陽が照らす。
銃を持った少年、ドロスが赤レンガの壁に寄りかかって歩いている。
「はぁ…はぁ……。生きてる……。」
右手で押さえてる左肩からは赤黒い血がでてきている。
(みんなは…みんなは大丈夫かな………。)
視界は既に、機能しなくなってきている。
「生きる……生きる…………。」
(父さんと母さん、ミリの仇を取るまで………。)
気づけば左足は動かなくなり、壁に寄りかかっていることさえ辛い状況になっていた。が、足だけは止めなかった。
―――思えば散々だった。
戦争に巻き込まれ、幼くして、両親を亡くした。これまで一緒に生きてきた弟もテロに巻き込まれて死んだ。
その後、同じような境遇の仲間数人で組織を結成し、世界を変えるために戦った。
勢力は拡大したが、最初に出会った仲間たちは戦いの中でそれぞれ命を散らしていった。
「ヴァレイ・ラヴェル。」
今までの紛争、テロ、混沌、全ての元凶の軍人の名前だ。そして………
「父さんと母さんを殺した張本人……。」
スパイとして政府に潜入していたノイが遺してくれていた情報だった。
(殺す、必ず!!俺の手で………!!)
痛みも恨みも血も命も全てを喰らって前に進む。
やがて見えた高い建物の階段を少しずつ、少しずつ、確実に上がっていく。
途中、一室でちょっとした仕組みを組み立てて、また階段を上がる。
(まだ、まだ見えていてくれ。)
数百という階段を上り終えると、そこには、スナイパーライフルが置いてあった。
そばには、数体の死体がある。
「悪い、ハセム。借りるぞ。」
すぐに行くからな、と死体に語りかけ銃を手に取る。
――――ハセム、ナームナード、ノイ、フェルト、俺。
最初はこの5人だけだった。
「……懐かしいな。」
(よくしたな、狙い撃ち対決。)
ドロスの脳裏には仲間との思い出が浮かんでいた。
(アジトにはまだアンリィ達がいる。俺が失敗しても、きっと大丈夫だ。いや………)
「だからこそ……!!」
ヴァレイは今日、王子として、演説を行っている。
その距離約19キロ。
目をスコープに当てる。
霞んでいた視界が鮮明に見えるようになる。
照準をヴァレイに合わせる
心臓の音が近づく。
引き金を絞る。
「狙い撃つ……!!」
銃弾が花火のような音を立てて打ち出される。
――――――パアァァン!!!!!!
刹那。閃光が走り、体が衝撃で飛び、壁に当たる。
「ーッ!!……いってぇ……。」
呼吸が乱れる。
(………全て使った。)
目も耳も手も足も、何もかもを使った。
きっと大丈夫だ。
「はぁ…はぁ………。」
(今頃向こうはヴァレイ王子が死んで大騒ぎなんだろうな。)
「仇、取ったよ。」
これで、心残りはもう………
「……何のことかな。」
突如として、ドロスの前に1人の男が出てくる。
(ふふっ……。最悪だ…。)
「その声……。まぁ予想はしていたが。」
それは、憎くむべき仇、ヴァレイ・ラヴェルだった。
「悪いがあれは影武者なのだよ。アンリィ君にはいい仕事をしてもらったな。」
「……だろうな。薄々感づいてはいたが確証がなかった。……それはともかくなんで俺の前に来た。わざわざ殺されにきたのか?」
「冗談はよせ。お前は既に体も心もボロボロで動くことすらままならないだろう?」
「そうだな。」
それに、ヴァレイは元軍人。紛争やテロを自ら仕組み、そこで成果を上げることで、自分の計画を着実に進めていた男だ。
たとえドロスの体が動いたとしても普段のヴァレイ勝てるかどうかは厳しいだろう。
「知ってるか??この建物の役割。」
ドロスがヴァレイに聞く。
「所詮は君らの正義の秘密基地ってとこかな。」
「ククッ……残念。」
ドロスは少しだけ笑い捨てるといった。
「火薬庫だ。」
「なっ……?!!」
その瞬間、建物が赤く輝き、空気を引き裂くような音を立てて、爆発した。
爆発の中、少年は朦朧とした意識の中、仲間たち4人の影を見た。
「――っ!!!」
やがて少年は微笑むと、炎の赤色に染まっていった。
紅の復讐者 灰都 @shoutaaaaaa
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