異世界に来て21億年が経ちました
くろたこ4
プロローグ-上-
「できるだけ...痛くしないでください..」
薄暗い部屋で青年の声が響く。
青年は金属製の十字架に両手両足をがっちりと金属製の拘束具で固定されており、黒髪、黒目をしている。
「無理だな」
青年の前で長尺の鉈をブンブンと素振りする、まさにクールビューティーという雰囲気なシスター服を着た女性がちらりと青年を見て無慈悲に言葉を否定する。
女性はボディーラインが強調されたシスター服を着ており、シスターフードからはセンター分けされた綺麗な銀髪の前髪がのぞいている。長い後ろ髪は、器用にシスターフードの中で纏められ、肩にかかり、女性が長尺の鉈を素振りするたびに女性の豊かな胸とともにその綺麗な銀髪が重力に逆らって揺れる。
シスター服は動きやすさのためか丈が短く作られており、裾からは少し筋肉質な白い太ももがのぞいている。
「断面はきれいにするさ」
ブンブンと素振りを続けながら、また視線を青年にちらりとよこしてから的外れな回答をわざとすると女性は少し上機嫌になって、またすぐに青年から鉈に視線を戻して素振りをつづける。
(そういう問題じゃぁ....)と言うセリフを何とか飲み込み、青年は顔を引きつらせ、現実逃避をする。
青年は名前を佐藤アキラという。日本人である。目の前で鉈をブンブンと素振りするシスターを遠い目で見つめながらアキラはなぜ自分がこうなったか振り返ってみる。
アキラがこんな事態になったか、その理由はアキラが地球にいた頃から説明する必要がある。
地球にいたころアキラは大学受験がやっとの思いで終わり、ぬくぬくと春休みに入る高校3年生だった。
怒涛のテストラッシュも終わり、滑り止めの大学からも合格通知を勝ち取り、あとは希望する大学の合否通知を待つばかり、すっかり心が軽くなったアキラは残りの高校生活の中で自由を満喫していたある日、アキラの日常は突如として終わりを迎えた。
アキラの眼下に真っ白な部屋が広がる、いや、真っ白な部屋だけではない部屋の中心には古風なこたつ、その中で長い白髪からきらきらとした緑と青のオッドアイをのぞかせ、漫画を読むまさに美少年といった容姿の少年が、その容姿に似合わずものぐさに、ごろごろと漫画を読んでいる。
「こたつ...?」
あまりに突然に起こった出来事であったせいか、はたまた大量の情報のせいかアキラの脳はパンクした。その中で唯一正常に処理できた”こたつ”という単語だけがアキラの口からこぼれる
「あっ、ちょっと早めに来たね」
白髪の美少年がアキラに気づくと、どこからともなく取り出したみかんを口に放り込み、咀嚼しながら言う。
しぐさはぐうたらな子供そのもので行儀も悪い、しかしどこか神秘的である
「君にちょっとしたお願いがあってね、アキラ君」
みかんを咀嚼し終えると、キラキラしたオッドアイでアキラの目を見つめる白髪の美少年
「えッ..はい?」
唐突なことにまだ思考が追い付いていないせいか、アキラは間の抜けた返事をする。
「君、星の開拓とか興味ない?」
白髪の美少年は意外なことをアキラに提案した。その提案のせいかどうかわからないがフリーズしていたアキラの脳はその提案に反応し突如再帰動、高速で回転をはじめた。
宇宙人、ロケット、衛星などなど星や宇宙に関する単語を一通り連想し、アキラの脳は一つの答えを導き出す。
「えッNASAの方?」
「ッ?」
「んんん???」
アキラの予想の斜め下を行く回答に白髪の美少年も反応に困る
「神様とか宇宙人の前に、まずNASAが出てくるんだね君は」
「確かにそれっぽいこと言ったけれどね」
と笑顔を保ったまま、戸惑ったように言う白髪の美少年
「あッそっか日本語でしゃべってるからJAXAの方ですね」
と得心が言ったとばかりに手を叩いてうなずくアキラ
「JAXAでもないかなぁ、(汗)」
ブレーキのかかる様子のないアキラにブレーキをかける隙を窺う白髪の美少年からは悲哀が感じられる。しかしアキラの暴走は止まらない。
次にそれを聞いたアキラは(なん!?っだと!!)と言わんばかりにアキラは顔を驚きと戸惑いにゆがめ、白髪の美少年を二度見する。
「そんなに驚かれてもぉ(汗)、って言うか驚くところそこなんだね」
「そこじゃないと思うんだけどぉ(汗)」
と白髪の美少年が内心を漏らす。白髪の美少年はかろうじて笑顔を崩さず、余裕のある対応を心掛けるが、アキラに気おされ気味である。
「じゃあやっぱりNASAの方なんですね?」
と冷静にもう一度白髪の美少年にとんちんかんな返答をするアキラ
「いや、違うから」
「普通もっとあるよね、先に聞くこととか!」
さすがに堪えるきれずアキラにツッコミを入れてしまう白髪の美少年。
「はッ!?そうか、僕!ご両親の方は今出かけてるのかなぁ?」
と、しまったという顔をしながら明々後日の方向に会話を投げ飛ばし、会話をさらに迷宮入りさせるアキラ。
「成人してるよ!!」
白髪の美少年はすかさずツッコミを入れるが、
「成人してるの??????」
という白髪の美少年の容姿から見ればまっとうなリアクションを、この部屋に来て初めてするアキラ。
「全く、調子が狂うなぁ、仕切り直すよ」
やれやれといった風に両手でジェスチャーをする白髪の美少年
「私はテラ、聞きなじみのある言い方だと神様だね」
と切り替えてニコッとアキラに向き直りテラが言う。そうすると、アキラはまたもやなるほどっと手を叩いた後(ははー)といった具合にテラに向かって大げさにひれ伏す。それはもう綺麗なフォームである。
「神様だとは知らず数々の無礼をお許しください」
アキラは見事な棒読みでテラへ謝罪する。
「信じてないよね君!」
「いえ、信じてますよ」
「僕、奇跡も魔法もないけど神様はいると思ってる派閥の人間なので!」
とヒョコっと顔だけ挙げてテラに向かって自信満々に高らかと宣言するアキラ
すごくいい顔をしている。
「じゃぁふざけてるよねぇ君?」
「私、思ったけど相当神経太いよね君!?」
アキラへのイラつきをだんだんと隠せなくなってきたテラは、
かろうじてまだ優しい笑顔を保ちながら言う。
「はい、泰然自若がモットーでして」
と嬉しそうに答えるアキラに対比して会話のキャッチボールが進むにつれてだんだんとジト目になっていくテラ
「どう考えてもおちょくってるとしか思えないんだけど」
「いいえ、きっちり敬ってます(棒)」
「敬ってたらもっと緊張すると思うんだけどなぁ私」
「じゃぁ、これが僕なりの緊張の仕方だとお受け取り下さいテラ様」
とテラの目をまっすぐ見てニッコリとした顔で言う。アキラにはもう降参だといわんばかりに
「.....ハァ(ため息)、まぁいいや」
と眉間を抑えほとほと疲れたという様子で言うテラ。
「話を進めたいんだけど、私のお願い聞いてくれるのかい?」
「星の開拓でしたっけ?」
「そうそう」
「僕のような小僧をよこしてどうしようって言うんですか?テラ様」
と心底疑問なを顔をしてテラを見るアキラ
「そこは私の言い方が悪かったかもしれないね」
「気軽に異世界転生だと思えばいいよ」
と再び優しい笑顔に戻ってちょっとコンビニ行ってきてよ、みたいなノリで転生をアキラに進めるテラ
「気軽に異世界転生?」
と訝しげに顔をゆがめで言うアキラ
「あれ?若い子にはこれでなんとなくわかるんじゃないのぉ?」
「突然目覚めた力で無双することを夢見たりしないのかい?」
「あげられるんだよ!?絶大な力!?」
と、話が違うといった様子のテラに
「わかりますけど、そんなに絶大な力をもらっても力に溺れてクズになるのが関の山だと思うんですよねぇ」
と何かを悟ったような冷たい現実をテラに浴びせるアキラ。
「そんな悲しいこと言うのかい!?最近の子は」
「だって、普通もっと地に足ついてますよ高校生ですよ?、現実とファンタジーの境界くらい分けるでしょう?」
当然でしょ?という様子のアキラに複雑に眉をゆがめるテラ。
「いや、夢あふれる高校生の言うことではないと思うな私は」
「それはそれとしてあげると言ってるんだからこういうのは受け取っておくんだよ君」
「いやどういのですか?」
「ほいっ」
とテラが手を掲げると極太の光線がテラの手のひらからアキラに向かって放たれ、アキラが光線に包まれる
「おおおおおおおお!!」
「おおおお??」
「なんともない」
手をにぎにぎしながらアキラは自分の体の様子を確かめる、
見たところ変化はないようだ
「見た目で変わったところはないよ」
サラっとこたつに入りながら極太光線を放ったテラがニコニコしながら言う
「君の力は再生の力だよ!、どんな怪我も病気も自分の物なら直すことが出来る、最強の力だよ」
高らかにアキラに力を開設するテラ。
「それって死なないだけでは?」
とテラの高いテンションにつられず冷静に指摘するアキラ
「ほら、”倒れねぇのはクソ強えだろ”っていうんでしょ?最近の子は」
どこかで聞いたことのあるようなセリフを言うテラ
「それって再生じゃないですよね?」
「面白いよねぇ、すごいよ人間!!」
と嬉しそうに話すテラを(俗っぽ、この神)とアキラは思った。
「じゃ、やることもやったし異世界に行ってもらおうかなぁ」
と手続きがやっと済んだという様子でごり押しに話を進めにかかるテラ
「了承した覚えないですけど..?」
とこの部屋に来て初めて真剣に焦り始めるアキラ
「じゃ転送するよーじっとしててねー(棒)」
「あのテラ様?」
「マジでこのままですか?」
「動くと頭とか取れるからねー(棒)」
とすらすらと怖い注意事項を語るは、アキラの話を軽く無視する。
「え、大学進学を目前に異世界転生ってマジですか?」
「はーい3」
「冗談じゃぁ無いんですけど」
「2」
「せめて高2の時とかがよかったんですけどおおおおおおおお!!」
「1」
というテラのカウントを最後にアキラの意識は光にのまれアキラは部屋から消失した。
「はぁ、まったく困っちゃうよ一つの星に
「冗談じゃないのはこっちなんだよまったく、
と愚痴をこぼしながらいそいそとこたつに入りなおすテラ。声色には安堵と呆れの感情が込められている。
「まぁ、終わったことだし、○ロアカの続きでも読も~と♡」
そしてアキラが来るまで読んでいた漫画をもう一度手に取りルンルンな様子でテラは漫画を読み始めた。
-異世界-
「ああああああああああああ!」
上空から落下するアキラ
「あああああああああああああ」
「ああああああああああ」
「ああああ?」
「あああああああ!」
ベチャッっと地面と激突し嫌な音を立てる。それとともに感覚が一瞬だけ消失しアキラの意識が途絶える。
アキラは気づいたら赤い水たまりの上でぼーっとしていた。
「あれ?死んでない?」
自分が生きていることへの疑問が自然と言葉になってこぼれた。
あたりは赤い水たまり以外一面荒野だ。
アキラは自分の状態を確かめていく、
(両手は...ある、足も、動くし、体も動くし痛みもない、服は何故か着ていない?、なぜか床が赤いし、というかなんで赤いのかは考えたくなっ!!)とそこでアキラの思考は中断された。
なぜか?....アキラは重大な事実に気が付いてしまったからだ
「おっ...俺の愚息が.....無い!!」
なんとアキラの男性機能が消失していたのである。それはもうつるつるである。
これには泰然自若がモットーのアキラも焦りまくり、あたりをおろおろしながら探し始めるが、
「ない.......」
結局アキラのアキラは見つからず、佐藤アキラ18歳、青年(男)は見事、佐藤アキラ18歳、青年(無性)へと転生を果たしたのだった。
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