リゾートバイト先がサキュバスしかいない島の女子寮管理人だった!

灯色ひろ

第1話 私を愛してください


「ソータ先生……」


 彼女がこちらを見上げる瞳は──朱い。


 その息づかいは少々荒く、顔は上気したようになっている。密着している彼女の身体は熱く、高鳴る胸の鼓動まで伝わってきた。


 ──風邪? 体調不良?


 いや違う。何か様子がおかしい。平時の彼女じゃない……!


「あっ──」


 後ずさりしてしまい、敷いている途中だったふとんにつまづき尻餅をつく。こちらに体重を掛けていた彼女も一緒になってふとんの上に倒れ、まるで押し倒されるような格好になってしまった。


 僕の上に馬乗りになったパジャマ姿の彼女は、サラサラと流れる長い髪を耳にかけると、細い指で僕の頬に優しく触れた。


「ごめんなさい……ソータ先生……」


 火照った彼女の顔が、徐々にこちらへ近づいてくる。艶めかしいその息づかいがすぐそばで聞こえ、今にも唇が触れてしまいそうな距離だった。


「メ、メモリさんっ? どうしちゃったの……!?」


 少し震えるような声で呼びかける。

 彼女は僕のすぐそばで、ささやくように言う。


「私……気付いてました。ソータ先生と、キス……してしまったこと……」


 ドキッと大きく胸が跳ねた。


「あれから、おかしいんです……。ソータ先生のことばかり考えてしまって、他に何も手につかなくて……身体が熱くて、胸がドキドキして……」


 そう言って彼女はこちらの手を掴むと──僕の手を自身の胸元にそっと押し当てた。


 柔らかな感触とその温もりが、頭にビリビリと響くようだった。



「もう、我慢できないんです……。ソータ先生が、欲しい。ソータ先生と、一つになりたい」



 そこで僕は──信じられないものを見た。


 彼女の背中に、小さな翼のようなものが生えている。さらにひょろっと伸びた尻尾らしきものまで確認できた。



「ソータ先生……私を、愛してください……」



 その妖しい瞳は輝くように潤み、僕を捉えて離さない。


 彼女の桜色の唇が近づき、また、触れあってしまいそうになった瞬間──。

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