第15話

マール城に向かうための、本格的な旅が始まった

ワイスが万事屋なおかげで

寝泊まりではキャンプが行える

何度か寝泊まりをして何日か過ぎても

私はサンゴと戦った時の記憶が鮮明に残っている


デルちゃんからは逃げて、サンゴには手も足も出なかった

産まれた頃から戦いなんてしたことが無い私に

勇者なんて務まるのだろうか、と思ってしまう

そんなことを考えてると、すぐに一日が過ぎてしまう


「よし!今日はここでテントを建てようか!シン君、いつも通り焚き火を頼むよ。ボタン君とうちは調理、そしてリア君と相棒は具材を採りに行ってくれ」


私は家事なんて出来ないので、基本的に採取係だ

力仕事はシンが任せろ!って言ってたし

後の3人は日によって担当を変えている


むかーし料理はやった事あるけど

リアに今後一生やらないで下さいって言われたんだよな〜

あ、このキノコ、昨日も食べた大丈夫なやつかな


「最近、元気がないようですが。この前のこと、まだ気にしていらっしゃるのですか?」


「あー……まあね。リアを致命傷にさせたのも、この前サンゴに負けたのも、私が弱いからだよね」


「……お嬢様、私たちは何故ここにいるかわかりますか?」


「え?そりゃあ……リアは私のメイドだし……シンたちだって、私が勇者から同行してるだけだと思うし…」


「貴方がもし、魔王の娘という肩書き通りの性格だったとしたら、私はここにいません。少なくとも、ワイス様は魔物に怯えたまま立ち止まっていたと思います」


すると、リアは採取を止めて

私の前まで来ると、跪く


「それは貴方が、誰一人傷つけない優しい心の持ち主だからです。たとえ悪さをした魔物でも、凶暴な獣でも、あなたは優しく受け止めた。そんな貴方だからついてきてるんですよ」


滅多に見せない微笑み笑顔を見せてくれる

その言葉に、私は思わず、ポロリと涙をこぼす


「お嬢様は、確かに弱いかもしれません。でもその弱さは、きっと世界を救えると、私は信じています」


リアは私の手を取って

お互い汚れた土をピンク色のハンカチで落としてくれる

そして掌を光らせると、私の手の擦り傷が治っていく


そういえば、リアは生まれつき回復魔法が使える

そんな魔法、魔王城の人達は誰も使えないから

凄く珍しいと、はしゃいだのを覚えている

このハンカチは……私がリアと最初に会った頃に渡してあげた…

まだ持っててくれたんだ


「どんなに傷つこうが、私が必ずこうして治して差し上げますよ。昔、貴方が私にしてくれたように。だからこそ。これからもそんな貴方でいてください」


「リア………ありがと……」


その後、私は暫くリアの隣で泣いていた

そして私たちの隣には

十文字に広がったピンク色の花が咲き綻んでいた




そんな所を遠くで見ていた3人は


「やはり、リア君なら相棒を元気にしてくれると思ったよ!」


「流石昔からの付き合い、だな。だがやけにリアはカモミのことを理解しているようだな?」


「まあね。10年前、奴隷で捕まっていたリアを助け出したのは、カモミだから。」


「奴隷か……その事も、いずれ聞けるといいのだが……」



【第15話 ブバリア】

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