第5話
きっかけは、いつ来るか分からない
私が勇者になったことも。
私がパパと喧嘩したことも。
そして、今、目の前の幼なじみの親友が
魔物の大群を引き連れて現れたことも
「皆殺し……?デルちゃん何を言って…」
私はデルちゃんに近づこうとするが
横からリアに突き飛ばされる
すると、さっきまで私がいた場所は焼け野原になっていた
その光景に、思わず言葉を失う
兵士たちは私を守るように囲い
他の兵士たちも魔物の戦闘を始めてしまう
先程までに盛り上がっていた声は、悲鳴へと変わっていく
「お嬢様!お怪我はありませんか!?」
「私は…大丈夫……でも、皆が…」
「今は皆さんより自分の事を考えてください!この群れは、恐らくあなたの勇者の剣を狙っています!」
「で、でも……あれデルちゃんでしょ!?なんでデルちゃんがそんなこと…」
「分かりません…魔王城で何かあったのかもしれません、今は逃げましょう!」
リアに手を引っ張られながら
その場を後にしようとするが
すぐに私の目の前にデルちゃんが現れる
リアは私を庇うように前に出る
シンも私の所へ駆けつけ剣を抜く
「シン様、お嬢様を連れ逃げてください」
「何を言っているんだ!この魔物達は強い!1人でどうにか出来るとは思えない!」
「ここで私たち2人が戦えば、誰がお嬢様を守るんですか!」
「くっ……!!分かった」
「え、待って!リア!!!やだ!行きたくない!」
「お嬢様……必ず生きてください」
シンに強引に引っ張られながらも
リアの言葉が聞こえ、私は思わず泣きながら走る
何故……どうしてこんなことに……
「……まさか、貴方と戦うことになるとは思いませんでした」
デルは沈黙を貫く
「何が目的が分かりませんが。お嬢様を傷つけるならば貴方でも斬らねばなりません」
するとデルはにやついて呟いた
「……私に勝てるか?」
ただならぬ殺気に、後退りそうになる気持ちをグッと抑え
リアはナイフを構える
「勝たねばなりません……この命に変えても!」
シンと2人で走って、どれぐらい経っただろう
体力の限界で私はつまづき転んでしまう
後ろを振り向くが、追っては来ていないようだった
しかし、あんなに賑わっていた城は
一夜にして陥落していた
「そんな……我が城が……」
膝をついて項垂れるシン
私も淡く光り輝く勇者の剣を眺める
これを抜くことは即ち、勇者の復活とも取れるし
魔王の復活とも取れる
私をみても、デルちゃんは気づいてくれなかった
パパとも仲直りしてないままだし
優しいパパがこんなことをするとは思えない
きっとこの勇者の剣が何かの鍵になってるはずだ
「このまま絶望するわけにはいかない…シン、力を貸して」
「力……?どうするというのだ?」
「私はこの剣を持って魔王の所に行かなきゃいけない気がするの。だから一緒に戦って欲しい」
「君は……つよいな、あの力の差を見てもなお、立ち向かうのか?」
「それが……私が勇者の剣を抜いた意味だと思うから」
私の言葉にシンはフッと笑う
立ち上がって私に手を差し伸べる
「分かった、私も勇者の君を守れるように立ち向かうよ!」
こうして、私たちの旅が始まった
【第5話 勇者の使命】
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