お酒にだらしない先生
SASAKI J 優
第1話
玲子先生には誰にも知られたくない秘密があった。それは「お酒にだらしない」ということだ。普段は厳しく生徒に接し、冷静な教師として振る舞っているが、ひとたびお酒が入ると、どこか抜けた一面を見せてしまうのだ。
冬休み直前、学校の職員忘年会が開かれた。玲子も参加していたが、同僚たちの勧めでいつもより多く飲んでしまい、気づけば酔いが回っていた。
「うぅ……もう飲めない……」
ふらつきながら家に帰ろうとする玲子だったが、足元がおぼつかず、そのまま倒れそうになる。
そこに偶然通りかかったのが、藤崎麻衣だった。
「先生!? 大丈夫ですか!?」
「ん……藤崎? なんでこんなところにいるの……?」玲子はろれつの回らない声で麻衣を見上げる。
麻衣は呆れたようにため息をついたが、すぐに笑顔に戻った。
「先生、放っておけませんから、私が家まで送ります!」
「えええ? そんなことさせられないわよ~」
玲子は拒否しようとするが、麻衣は彼女の腕をしっかりと支えた。
麻衣の家に到着した玲子は、完全に酔いつぶれてしまっていた。ソファに寝かされた彼女は、麻衣の用意した水を飲むどころか、そのまま眠り込んでしまう。
「もう……先生、しっかりしてよ」麻衣は玲子の顔を見ながら苦笑した。
ふと、玲子が小さな声で呟いた。
「ごめんね……こんな私……」
麻衣はその言葉に少し驚いた。玲子が弱音を吐くのは初めてだったからだ。
「先生、謝らなくていいんですよ。私、こういう先生も好きですから」
麻衣は玲子の髪を優しく撫でながら微笑んだ。
翌朝、玲子は頭痛とともに目を覚ました。周りを見渡すと、そこは見慣れない部屋。昨夜の記憶が断片的に蘇り、玲子は顔を真っ赤にした。
「私、何かやらかした……?」
「やらかしましたよ、先生」
キッチンから顔を出した麻衣が、冗談めかして答える。
「えっ!? 本当に何か……!」
玲子は動揺するが、麻衣はクスクスと笑った。
「大丈夫ですよ。ちょっと酔っ払って、私に迷惑をかけただけです。でも……」
麻衣は玲子の隣に座り、真剣な顔をした。
「先生が自分のこと、だめだなんて言わないでください。私にとっては、どんな先生でも大事な人なんですから」
玲子はその言葉に胸を打たれた。麻衣の真っ直ぐな目が、自分を責める気持ちを溶かしていくようだった。
「……ありがとう、藤崎」
玲子は小さく呟いた。そしてふと思い出す。
「そういえば、昨夜何か約束した気がするんだけど……」
麻衣はニヤリと笑った。
「はい、しましたよ。先生、私とデートしてくれるって!」
「えええ!? 嘘でしょ!?」
玲子の慌てる様子を見て、麻衣は声を上げて笑った。
「冗談です! でも、また一緒に過ごしてくださいね。約束ですよ!」
玲子は顔を赤らめながら、仕方なく頷いた。
「ほんと、あなたには敵わないわね……」
お酒にだらしない先生 SASAKI J 優 @teinei016
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