五人目(!?)「本庄 憐(ほんじょう れん)」=花嫁の友人

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 この子、わね……)


 !?

 ――――!!?


 今この場で、唯一……本当に唯一、真相に気付いているのは。

 悲劇の渦中にある殺人事件の花嫁(死んでない)の傍らに佇む、友人。


本庄ほんじょう れん〟――彼女が血まみれ(忖度そんたく)で横たわる花嫁の顔をガン見しつつ、思うことは。


(近くで見てれば明らかだけど、めっちゃ顔に汗かいてるし、軽く震えてるし……ていうか普通に息してるから、胸元が上下しちゃってるし。演技力ないな花緒里。で、この匂い……コレ血じゃなくて、ワインか何かじゃない? 不注意で零しちゃって、誤魔化そうとしてるとか? ……ていうか匂いで気付きそうなモンだけど――)


「ふむ。……ふう、やれやれ、鮮烈なる血のニオイに誘われ、ボクの探偵たる思考力が研ぎ澄まされてきましたよ……ここからが、高校生探偵であるボクの時間……!」


(鼻つまってんのかな、この探偵ちゃん。もしくはワインの匂いだけで酔ってる? ああもー、既にややこしいけど……これ以上前に、花緒里に起きるよう促して、素直に謝らせるか……)


 はあ、とため息を吐いて。

 憐が友人である花嫁に、耳打ちすべく近づこうとした――その時。


「………ねえ花緒里、ちょ」


「ふむぅ――ん!? 花嫁のご友人さん、あなた……なぜ今、被害者に必要以上に近づこうと!? まさか……意外や意外、三人の容疑者でなく、貴女が犯人――!?」


(いや違うわぁぁぁ! ナニコレ近づいただけで容疑が感染していく流れ!? なんか友人がゾンビウイルスの感染源みたいに扱われてる、斬新な展開!!)


 今もなお顔面に汗だっくだく流し続けている花嫁に近づくことも許されず、憐は高校生探偵・サエに言い返す。


「あ、アタシが犯人なワケないじゃない、エレベーターで上がってきたのに!」


「しかしその様子を見た者はいない……いえ、たとえ別の階でアリバイが浮かんできたとしても、トリックを使えば……犯行は、可能……!」


「邪推なんだわ、それは!」


「ハッ! そうか……ウェディングドレスに、何か仕掛けを!? 友人ならば、被害者の行動パターンも分かるはず……そう、友人だからこそ、実は何か恨みがあったとか、犯行動機がある可能性も高い……!」


「邪推すんなってんだろ! そもそもアナタこそ、高校生探偵・サエっていうけど……いや確かに、どっかで聞いたコトあるけど……本物なワケ!? 言っちゃ悪いけどポンコツっぽいし、実際に事件を解決したコトあんの!?」


「むっ、失礼な! このボクは、事件解決率100%ですよ!?」


「えっ、そうなの、スゴイ……ちなみに何件、どんな事件を?」


「迷子の猫ちゃんを見つけて、それが今日で5件ほどです。ちなみに都心から、泊りがけでこの地方まで来ました」


「あっそういえばニュースとか動物番組で見たわアナタ! お手柄女子高生とかで! じゃあもう探偵じゃなく保護猫活動家だな!」


「! 保護猫活動…………!? なるほど……!」


「探偵を無理やりつけんな! 何だその執着心! ああもー、やめとけやめとけ、こんなの殺人事件とかじゃないし――」


「む。……殺人事件じゃないと言う、その根拠は?」


「えっ。……それは、だって……」


 高校生探偵(忖度)サエに問われ、憐は友人の――血まみれ(忖度)で倒れる花嫁・花緒里を見ると。


「……ッ……ッ、ッ……!!」(ぷるぷる)


(……めっちゃビビって、震えて……なんか、可哀想だな……う、うーん、何とか上手いコト、場を収められないかな……っても、もうかなり手遅れな気も……)


「ふむ、根拠はないようですね。ふふ、ふっ……眺めが良いと評判の最上階に、何となく(階段で30階以上を)上がってきましたが……やっぱり探偵といえば殺人事件! 解決も恐らく目前、なんかボク……テンション上がってきましたよ――!?」


(手遅れなのは、主にこの子のせいでな! しかも性癖が奇特だな! 探偵って皆こうなの!?)


「解き明かせない事件など、この世に存在しない、そう――

〝実は犯人なんていなかった〟とか、そんなオチでもない限り――!」


(いねーのよ犯人! じゃあもう解き明かせねーな、この事件! ちょいちょい惜しいトコでカスってるのに、何で肝心なトコで察しが悪いのよ……ああもー……どうしよ、こんなコト……こんなコト)


 汗だっくだくで震える、赤薔薇に染まりし花嫁の傍ら――何とも言えない、言い出せない友人、憐。


 そして―――は―――

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