聖なる夜に二度目の初恋を

遊野煌

第1話

「 病める時も、喜びの時も、 悲しみの時も

富める時も、 貧しい時も、これを愛し 敬い 慰め合い 共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」 


心地よく、響き渡る鐘の音に見守られながら、聖なる夜に、私達は、永遠の愛を誓った。


私は、純白のドレスに百合のブーケを抱え、シルバーのタキシードを着た陽太ようたと誓いのキスを交わし、今まで生きてきて1番幸せだった。


雨女の私は、晴れ渡った気持ちで星達が煌めくクリスマスの夜空を見上げながら、この夜を境に、25年間名乗り続けた、高橋晴香たかはしはるかから、川本晴香かわもとはるかに名前が変わった。


一生分の幸福がフラワーシャワーと大勢の歓声と共に降り注ぎ、満面の笑みの私を見つめながら、大好きな陽太を見上げれば、優しい幸せに溢れたキスが何度も落とされた。



「晴香、ずっと一緒にいような」


「陽太、これから宜しくね」 


そう言って、笑い合いながら、互いに寄り添って、支え合うことを誓ったのは、3年前のクリスマスだった。


陽太と暮らし始めてから3年、陽太の妻になってから3年……その年月と共に、あの聖なる夜に誓った、永遠の愛は、家族という名の絆に代わり、私達夫婦は、いつの間にか大切なコトを忘れてしまっている事に気づいて居なかった。

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