「あれ？なくなってる」

翌朝、私は図書館扉横の手紙投函ボックスの上に君江から預かった手紙を立てかけておいたのだが、放課後、手紙の仕分けにやってくると置いたはずの手紙はなくなっていた。

（誰かが取りに来たんだ。やっぱりおばあちゃんの知り合い？だったってこと？）

私は首を傾げながら投函ボックスから手紙を回収し、いつものように図書館の片隅で仕分けを始める。そこへ、莉可が配達から帰ってきた。

「野乃花、お疲れ様。ねぇ、さっきまであった投函ボックスの上の手紙知らない？」

「『この手紙をあなたへ』って宛名が書いてある手紙のこと？」

今日日直だった私は黒板掃除の為、いつもより図書館に来るのが遅くなってしまった。莉可は私より先に図書館にやってきて、昨日仕分けしておいた手紙を配達して戻ってきてくれたのだ。

「それそれ。宛名がないから野乃花があそこに置いてるんだろうなって」

「うん。置いたのは私なんだけと、あの手紙書いたの、うちのおばあちゃんなの」

「どゆこと？」

私は昨日届いた『この手紙をキミへ』と書かれた手紙のこと、その手紙を書いたのが祖母の知り合いかもしれないことを莉可に話した。

「うーん……それはどうゆうことなんだろ？野乃花のおばあちゃんはその手紙を書いた相手に心当たりがあってお返事を書いたってこと？で、その手紙をついさっき誰かが持ち帰ったってことだよね？」

私が頷くと莉可が怪訝な顔をした。

「でもここの学校の生徒が書いた手紙が野乃花のおばあちゃんにわかるって何かあるのかな？」

「うーん、また聞いてみるね」

「でもまぁ、持ち帰ったってことは、おばあちゃんの読みは正しかったってことよね」

莉可が顎に拳を当てると床を見つめながら首を捻っている。莉可は推理小説が大好きなのだ。

「もしまた手紙が届いたらおばあちゃんが届けてほしいって言ってたから、少し様子みてみようか」

「匂うわね！これは連続宛先不明手紙誘拐事件の幕開けだわっ」

人差し指で私をビシッと指さす莉可が可笑しくて、私は声をあげて笑った。

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