深山から通う高校生活
浅葱
ニワトリ、コンドルと高校へ
プロローグ
―風薫る五月。
山奥に住んでいる少年の朝は早い。日が昇る前から炊き立てのごはんとお
「今日も平和でありますよーに! ばあちゃんとうちの子たちが元気でいられますよーに!」
軽く社の周りを掃除し、ごはんとお神酒を置いてパンパンと軽く手を叩いて祈ってから、少年は社を出た。
振り返り、社の上にコンドルが留まっているのを確認して、少年は苦笑した。
「コンちゃん、暗いから危ないよー」
東の空は明るくなってきているが、山頂部分も木で覆われている為まだそれなりに暗い。
「戻ってごはん食べたら学校行くからー」
少年はそうコンドルに伝えた。
グググググと低い声でコンドルは鳴いた。わかったと言っているようで少年は笑む。そしてダダダダダッと階段を駆け下りた。
すでに居候である高校教師は家を出ていた。軽トラで山を二つを越えた先の高校へ向かったのだろう。
「ったくたまには乗せてってくれたっていいだろうに」
そう少年が呟いた。家の表で少年の祖母から餌をもらっていたニワトリたちは一瞬頭を上げたが、すぐに興味をなくしたように餌に戻った。家のすりガラスの戸は開いている。
「先生は忙しいんだからしょうがないでしょ」
祖母がそう言いながらどんぶり飯をよそい、少年の前に置いた。
「いただきます!」
手をパンと合わせ、少年はほうれん草のお浸し、漬物、納豆、肉野菜炒めとみそ汁という朝食をいただいた。食べ終えるとすぐにリュックをしょってクロスバイク(自転車)に乗る。
「ごちそうさま、いってきまーす!」
いつのまにか後ろのカゴにはニワトリが一羽当然のように乗っていたが、もう少年は気にしないことにしている。
「いってらっしゃい、気を付けてね」
祖母の声を背に、少年はクロスバイクで山を
行きは比較的下りが多いがそれでも二つ山を登らなければならない。だがもう少年は慣れたもので、あまり速度を変えずに漕いでいく。この辺り一帯は元々少年の祖父の土地で、道は舗装されている。だからそんなスピードだって出せるし、自転車で山二つ越えた先の高校に通うこともできるのだ。
山を越えて麓に下りると少年はほっとした。
あとはこのままアップダウンが少ない道(少年基準)を走っていけばいいだけである。
しかしその日はそれで安心はできなかった。
「うわーっ!」
「きゃーっ!?」
高校の側まで来た時、悲鳴が聞こえた。何事かと少年が加速してそちらへ向かうと、興奮したイノシシが暴れているのが見えた。
プギィイイイイイイッッ!!
「マジかー」
おそらく山から下りてきたイノシシが人間の姿を見てパニックを起こしているのだろう。
少年はクロスバイクからパッと下り、それを道路の端に慎重に倒す。その際にニワトリは後ろのカゴからピョンと飛び降りて、トトトトトッとイノシシに向かって駆けていった。
「こらー、イチゴー、勝手に行くなよー!」
少年は慌ててニワトリを追いかけ、また何かに突進していこうとするイノシシの脇腹らへんに向かって勢いよく飛び蹴りをした。
ギイイイイイイッッ!?
そこへコンドルが急降下してイノシシの頭を蹴り、ニワトリはその尾をイノシシの足に勢いよくバーンッ! と叩きつける。
「あーもー、得物がほしいっ!」
「これでも使えー!」
「ありがとー!」
すぐ近くに住んでいるおじさんから投げられた竹箒を受け取り、少年はその柄でイノシシの足を何度も叩いた。とにかく足を止めなくては被害が増えるからだ。その間もコンドルとニワトリが果敢にイノシシに攻撃し、やっとイノシシは動かなくなった。
「ふー……」
朝から少年は汗だくになってしまった。
「大丈夫かー?」
「……おっそい」
朝少年よりも早く家を出て行った教師が、体育教師と共に軽トラで駆けつけてきた。
「おー、派手にやったなー」
軽トラから下りてきた筋骨隆々の体育教師が縄でイノシシを手際よく縛り上げ、少年宅の居候教師と共に軽トラの荷台に乗せた。
「
「いっけね!」
そこらへんで怯えていた生徒たちも促し、少年は近づいてきたコンドルの嘴を拭く。そして少年――本宮
カクヨムコン10参加作品です。楽しんでいただけると幸いです!
あらすじ欄に書きましたが、「山暮らし~」とは別の世界のお話です。
なんかへんなニワトリは出てきますが(笑)
よろしくお願いします
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