第7話 私にとって実穂ちゃんは特別なの

彼女は精神障害者で、障害者枠で病院の事務をしている。

精神障害者手帳という、施設や公園が割引になるという、ものを持っているらしい。


「み、実穂ちゃん、大きいSK公園に行かない?ち、駐車場も入場無料になるんだよ」


珍しい。

彼女から誘われる事は、滅多にないから。そして、なんだか緊張しているみたいだ。


「誘ってくれてありがとう。一緒に行こうね」


彼女は下を向いていた顔を上げ、嬉しそうだった。



当日、私の車に乗ってもらい、SK公園の駐車場に入った。彼女は緑色の手帳

を係員に見せた。

公園の係員でも緑色の手帳を見せ、園内に無料で入った。


秋の公園。

紅葉も色づき、ススキが首を垂れる。


ところどころで、足場が悪いところがある。


「はい、どうぞ」


彼女は私に手を差しのべ、私はそれをつかむ。


「手を繋いで、親御さんが悲しまない?お母様つーかーなんでしょ?」


彼女は悲しい顔をした。


「私は、実穂ちゃんのことはママに話していない」

「私にとって、実穂ちゃんは特別なの」


胸がギューッと押さえつけられる。

なんでそんな事を言うの?期待しちゃうじゃない

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