言の葉

ユウ

プロローグ


 彼に対して思う気持ちをどう言葉にすればいいのか分からない。



 高校生の頃に好きになった相手。



 遅い初恋の相手。



 簡単な言葉で誰かに彼についての事を説明するなら、そういう感じになるのだろうと思う。



 でもわたしの心は、そんな簡単な言葉では片付けられない。



 彼の事が忘れられずにいる。



 高校を卒業してから一度も会っていないのに、十年経った今も彼に対する好きという感情が消えない。



 だからと言って、他に好きな人が出来なかった訳でもないし、他の人と付き合わなかった訳でもない。



 ただ彼は、ずっとわたしの心にいる。



 それはまるで消えない傷跡のように、気にしなければ忘れてしまいそうなほど薄く、それでいて気にすればそればかりが目につくほどはっきりと。



 心の中に存在する。



 彼に対してどうしてそんな思いを抱いているのだろう。



 初恋だったからだろうか。



 片想いで終わったからだろうか。



 それとも、三年間同じクラスだったのにも拘わらず、挨拶しかした事がなかった未練の所為なのだろうか。



 分からない。



 だからこそ、彼への思いを断ち切る為にはいい機会だと思った。



 同窓会の知らせをもらって——。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る