第19話

蒼井さんに手を引かれ無言のまま連れて来られたのは、煌く灯りがひしめき合うホテル街。



適当に選んだホテルの、適当に選んだ部屋。大きなベッドが真ん中にあるそこに身体を投げつけられた。



スプリングに身体が跳ね、スカートが大きく捲れ上がる。



「蒼井さん....!」



「くそっ、疑われているならいっそ事実にしてやる....っ!」



荒々しくわたしの上に跨った蒼井さんは、ネクタイを緩めるとわたしの両手を縛った。



「.....痛いっ!」



与えられた痛みに顔を歪めるわたしを、上から見下ろす彼の瞳は狂っている。



あぁ、今は何を言っても駄目だと、その正気を失った姿を見て悟った。



「夏南.....くそ、夏南.....!」



「うん」



「僕、夏南を好きになれば良かった。夏南ならどんなに情けない僕でも受け止めてくれる」



「うん、そうだよ」



「.....っ、どうして紗由理なんだよ」



「そうだね、辛いね。

わたしを好きになってくれたらこんな想いをさせたりしない。けど、蒼井さんが好きなのは紗由理でしょ?」



ネクタイで縛られた両手をそのまま上にあげて、蒼井さんの頭を撫でた。

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