第26話

どこの誰で、どうしてこんなところに居るのか。


自分のことを何にも言わないほまれだけど、最初に感じた通り、家族や友達に愛されて大事に育てられたのだろうなぁ、と、彼を見てるといつも思う。


私も彼のようになれたら、良かったのに。




「あいは、困ってる人を助けてるだけでしょ。偉いじゃん、人助けが出来るなんて」




頭の上に、ずんっ、と何かが乗る。


おそらくそれは、ほまれの顎で、少し掠れたテノールの声が耳の傍で聞こえた。




「ほまれは困ってるの?」


「んーちょっとね」


「どうしたの?何かあるなら言ってよ」


「……聞いてくれる?」


「私に解決できることならね」




お金とかあんまり貸してあげられないし、保証人とかはさすがに無理だけど。


そんなことを考えていると、ほまれは足をバタバタとばたつかせながら喉を鳴らして笑った。




「あのね、さっきから、ずっとムラムラしちゃっててさ」


「え?」


「だって、あいが可愛いんだもん。ねぇ、しよ!」


「ちょっと、困ってるって、それ?」


「うん!」


「もう!馬鹿!」




私は真剣に考えていたのに……と、肩透かしを食らった気分になる。


それでも、無邪気に笑うほまれの腕に包まれていると、何だか全てがどうでも良いようにも思えた。


彼の腕の中は、温かった。

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