プロローグ

第1話

コツコツと……ボールペンで机を叩く音が、静かな教室の中に響く。



正直、耳障りだと思うその音に、不愉快な溜息が上乗せされ、わたしは心の中で悪態をつく。




(うざいんですけど)




廊下から時々聞こえる生徒の笑い声、窓の外から聞こえるのは吹奏楽部が鳴らす楽器の音、運動部の掛け声。



時計の長針が「5」から「35」に移るまで、たっぷりとした沈黙を続けた後、ボールペンを机に置いた人物が口を開いた。




「それで?何か言いたいことは?」


「ないです」


「じゃぁ、理由を説明しろ」




……、……、それ、30分前にも同じ会話をしたじゃん。



学習能力ってのがないの?、と自分のことは棚に上げて、またも心の中で悪態をつく。




「苦手だからです」




「に」の部分のアクセントを付けて、30分前と同じ答えをわざとゆっくり言った。




さぁ?次はどうでる?


怒る?呆れる?それともまた沈黙?




心地いいリズムで秒針が文字盤の中を駆け抜けていく。


その音を左耳で聞きながら身構えるわたしに、




先生は「そうか」と呟いただけで、教室を出て行った。

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