第23話 女王・加恋の男子カラオケ部屋、ご訪問(3)
かく言うオレも、加恋はすごく話しやすく感じていた。
相手の懐に入るのが上手いっていうのかな。
こっちがどんな言葉を返しても、間髪入れずに次の言葉を返してくる。
それも妙に近い距離感で、とても楽しそうな笑顔を添えて。
嫌われる要素がミリも見当たらない。
こりゃ男子からはモテるだろうし、女子からも好かれるだろう。
そういや自己紹介の時に、クラス全員と友達になりたいって言ってたっけか。
あれは本気だったみたいだな。
そしてそんな話し上手な加恋の空気に少し乗せられてしまい、オレはついぽろっと口に出してしまった。
「筋トレを
「え? 負けって? 誰に負けるの?」
加恋はわずかに目を大きく見開くと、可愛らしくこてんと小さく首をかしげた。
……しまった、つい口が滑ってしまった。
加恋があまりにも話しやすいせいで、本音が無防備にポロっとこぼれ落ちてしまった。
言うまでもなく、筋トレはもともと、夏美に釣りあう男になろうと始めたものだ。
だが別れたからって筋トレまで止めてしまったら、オレは恋愛のために筋トレして見栄を張ろうとした、情けない恋愛脳の男子になってしまう。
恋愛アンチの『オレ』としては、それはどうしても許容しがたかった。
恋愛アンチの考えが正しいことを『俺』に
――なんてことはもちろん、オレの中だけの話なわけで。
「ごめん、なんでもないんだ。独り言っていうか」
オレは話をはぐらかす。
「えー、気になる~~! そういう言いかけて止めるのって、よくないと思うな~?」
加恋が甘ったるい猫撫で声&上目づかいで言うと、
「そうだぞ加賀見」
「加恋ちゃんの言う通りだぜ」
「ちゃんと最後まで言うべきだと俺は思うな」
「んだんだ!」
またまた細川たちが即座に同調する。
ほんとお前らって奴らはよぉ。
「あー、うん。ごめん。まぁその、強いて言うなら自分にかな?」
オレはいかにもそれっぽい答えを言うと、テーブルに置いていた自分のコップを手に取って、入っていたメロンソーダをごくごくと飲み干した。
相手の心をつかむのが上手な加恋なら、これをオレの話したくない意思表示だと
加恋が来てからこっち話が盛り上がりに盛り上がっていたからか、メロンソーダの炭酸はすっかり抜けてしまっていた。
「自分との戦いかぁ。カッコイイねー。そういうことサラッと言っちゃうとか、もうほんと絶対にモテるでしょー? ほらほら、その辺、正直に話しちゃいなよ~?」
「オレ、そういうのまったく興味ないから」
「やーん、ほんとにクール~♪」
こうしてすぐにコイバナに繋げようとする恋愛脳なところ以外は、小鳥遊加恋は本当に非の打ち所がない女の子だった。
(そしてそこが一番、オレとは分かり合えないわけだが)
でも、なるほどな。
クラスの女王と一言で言っても、中学の時のオレのクラスを仕切っていた黒崎真紀のように、上下関係を構築し、文字通り女王として君臨して一方的に支配するタイプもいれば。
加恋のように周り全員に好かれることで、アイドルがファンに熱狂的に信奉されるように担ぎ上げられるタイプもいるんだな。
これを狙ってやってるならすごいもんだ。
……多分、狙ってやってるよな?
オレは加恋の言動に感心しつつも、しかしそこにそこはかとなく嘘くささのようなものを感じていた。
加恋の行動があまりに完璧すぎて、あまりに非の打ち所かなさすぎるからだ。
それもこれもオレが恋愛アンチなせいで、加恋を色眼鏡で見てしまっているからだろうか?
――ま、考えすぎか。
そもそも他人に好かれるために行動するのは、悪いことじゃないわけで。
わざわざそんなことして何の得になるんだよって話だ。
だからきっと加恋はいい奴なんだと思う。
だが恋愛脳な時点で、オレとしては加恋とは深くかかわりあうつもりはなかった。
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