嫌いだった君へ

翡翠

第1話

彼女のことが嫌いだった。

明るくて、眩しくて、いつも笑顔で、誰にでも優しくて。私の机の前にはいつも君がいる。

「また今日も笑ってる」そんなふうに、心の中で君を見下していたのかもしれない。

羨ましかったんだ、自分にはないものを全部持っている君が。


ある日、君が私に話しかけてきた。

「何してるの?」

私は表情を変えず視線を逸らそうとした。その時、君が言った。

「もっと自分を好きになっていいんだよ。」

その瞬間、気づいてしまった。私が嫌いだったのは、君じゃなく自分自身だったことを。

そして、そばにいて私のことを見ていてくれた君のことを。


「もし、私の気持ちを伝えられるなら、言葉を花束にして君に届けたかった。」

でも、あの日の君はもう私の前にはいない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嫌いだった君へ 翡翠 @hisui_08

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る