ようエク~魔術師たちの夢世界に住む精霊の話
kaname24
プロローグ とある昔話
今は遠い、まだ魔術という理が無かった時代。ある人間たちは龍やその眷属が振るう力に憧れ、禁断の果実のような抗えない魅力に手を伸ばしたいと恋焦がれていました。
龍に力を授かり奇跡を呼び起こす人間もいましたが、それは一部の選ばれた信心深い人間だけ。純粋な人の身で龍に並び立ちたいという異端な思想を持ち、人から忌み嫌われた彼らには縁の無い話です。
そんな彼らは何年も議論と検証を繰り返し、ある結論にたどり着きました。他の人間に知られれば……悪魔だと、恩知らずの不敬ものだと罵られるだろう結論に。
「僕たちに世界に干渉する力が無いのなら、僕たちに力を貸してくれる神様が居ないのなら、僕たちの手で神様を作ればいい」
のちに魔術の礎を築いた偉大なる夢想家、過去の先人と称えられる彼らは龍に代わる神様を自分たちの手で造ろうとしました。
今はクイントと呼ばれる場所にある迷宮から、過去の争いで眠りについた龍の遺骸や遺物を集めだし、地に流れる地脈から世界を定義する摂理に干渉し、新しい概念を作る。
そんな血と汗と数々の屍を積み上げるような苦行を彼らは何世代もの間を繰り返し、ようやく神を創造する偉業を成し遂げました。
そうして生まれた神の名はデウス・エクス・マキナ。人を愛する事を定められ、三つの権能を持つ神様。神様はフラスコの中で生れ、彼ら過去の先人たちに魔術という奇跡を与えました。
過去の先人たちの縁ある者たちから魔術という概念は布教され、魔術という一本の木が大樹にまで成長するさなか、神様たちは考えます。
「身分も出自も関係無い。友人を、共に学ぶ仲間を、競い合う戦友を見つけて欲しい」
二人の神様は世界中の魔術師たちが交流出来る場所が必要だと考え、創ったのです。夢の精神世界に。
元の支配者から領域を奪い取り、こう名付けました。”
そうして幻夢領域が生れ、夢の世界に賑わいが溢れて来た頃。ある神様は幻夢領域に魔術師たちが丹精を込めて紡ぎあげた魔術たちを記録し、保管する機能が無いと考えました。
どこもいつ滅ぶか分からない程に現世では酷く不安定で、災禍の中で消えゆく大切な知識や技術も多かった。愛しい人間の努力の結晶が無為に消えてしまうのは悲しいと、彼女は幻夢領域に図書館をつくることにしたのです。
そして神の一側面であった彼女はエクス魔導図書館を作り上げました。この大きな図書館が魔術の研鑽の役に立つと願って。そして一度はある龍の憤怒が図書館を燃やし尽したこともあったけれど、最初は小さかった図書館はどんどんと大きくなっていきました。
これがエクス魔導図書館が生まれた理由。そして、長い時が経った今もプトレマイオスは大きくなった図書館のエントランスホールで魔術師の到来を待っています。
「ようこそエクス魔導図書館へ。図書館は、貴方の到来を歓迎します」
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