高嶺の花の愛は、相談されるにしては少しばかり重すぎた。
むぅ
第1話 クラス替え
平凡な高校生、奥宮颯太。特に目立たず、上の役職には就かず、ひっそりと学校生活を満喫していた。毎日、ラノベを教室の端で読んで、周りにバレないようにニヤついていた。
だが、その平穏な日常は、毎年訪れるクラス替えというクソみたいな行事でぶち壊された。
一学年、1〜4までのクラスが存在し、驚いたのが、くじ引きで決めることになっていたことだった。その時は歓喜したさ。先生のご都合主義で決められないってことだからな。
だが、その喜びも、一瞬にして消え去るのだった。
「……げ」「あ」「お」
揃った…揃ってしまった…幼馴染が…
小さい頃はよく遊んだものだ。この三人の親は友達同士であり、事あるごとに連れ出されていた。そして、二人は出来る人となってしまった。そう、僕を除いた二人が。
「はぁ…」思わず頭を抱える。そんな行動を見逃してくれるはずがなく、唯朱が茶化すように口を開く。
「どうしたの?こんな美人な私に出会えて幸せなのかい?」
「逆だ逆。面倒くさいんだよ。顔がうるさいし」
「顔がうるさいは余計だ!」
啀み合っている二人と、それをニコニコと見守る理仁。その喧嘩の終着点は、学校の始業を告げるチャイムで終わった。目を合わせないまま教室の左隅の絶好の位置に着席し、買ってきたラノベを見ようとカバンを漁る。
左手に本らしきものを掴んだ瞬間、ちょいちょいと服を引っ張られる。体を起こすついでに本を取り出し、机の上に置く、そして、隣に座っている唯朱を訝しげな目で見る。喧嘩というか、言い合いをした後に何か用があるのだろうか。
「ちょっと…昼休みに相談したいことがある…屋上まで来てくれる…?」
耳元で囁かれた言葉は、何か、ずっしりとしたものを感じた。再度唯朱の方を見ると、ほんのり顔が赤くなっている…ような気がした。
特段断る理由がないため、軽く首肯し、本へ目線を移す。視界の端で、唯朱が他の場所に視線を移していたような気がするが、そこがどこかは分からなかった。
だが、そんなことは知ったこっちゃない僕は、本に向き合った。
その後、クラスの知らない男子たちに、どうして唯朱と気軽に喋れるのか。ということを聞かれまくったのは言うまでもない。
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