ふたりいっしょならば
くろと
第1話 甦りし者
『見よ、あそこに
ぎゃあぎゃあと騒ぐ人々の声で、吾は遠い昔、吾の幼き頃に都の祭にて、吾へと言い給ふ父上の言葉を思い出す。
右手に
「曲者じゃあっ!であええーっ!」
「三下、だな」
時雨家を
「お主は何者ぞ」
「吾は、吾は
「な、何を言うておるのだ。この下郎は、頭が沸いておるのか?黄泉の国からは蘇れんと赤子でも知っておろうに」
出てきた。こやつが
阿保の様な面をして、家柄に恵まれておったのだとよう分かる。.....いや、これからこやつの家は歴代一、間抜けの家となる。
「吾の血は父の汗、吾の体は母の愛。故に、故に最愛であった吾の父と母を奪い去りしお主らには、吾の
「かかっ、誰かと思うたら、お主は背走の小倅か。よう大きゅうなったな.....だがな、その程度では儂の僧兵には勝てぬぞ?」
吾が酢羅に対して口上を述べておると、背後から奴が現れる。
「.....っ、さっさと死ね!糞坊主が!」
.....数百の屈強な僧兵を従え、やってきたのは信楽和尚と民の間で呼ばれておる、吾にとって最も憎たらしき糞坊主であった。
「時雨家の内政に手を出しておいて、更に己が利益を貪るか」
「はははっ、何を言うておるのだ?我らは官軍ぞ、時雨様にお認め頂いたのだ。だがな.....今宵、時雨家と血縁を結ぶつもりでおったのに、貴様はぁああ!」
そう、吾はこのジジイに招かれた都の腐敗者共を皆殺しにして宴を台無しにしたのだ。
毒殺でな。
「実に無様で笑ってしまいそうだわ。ははっ!坊主は坊主らしく大人しく経を唱えておれば良かったのになぁっ!?」
「ィッ、うるさいうるさいうるさぁあああいっ!儂の僧兵は酢羅の兵より屈強ぞ!貴様に勝てるかっ?」
ジジイは己が圧倒的な強者であると思い出すと、悲痛な叫びから一転、吾を嘲笑いだした。
だがな。
吾は死兵ぞ、黄泉の国から甦りし背走の怨霊ぞ。
「ハハハッ!吾を殺せるものなら、殺してみろ.....糞坊主がッ!!!」
そう言うと、吾は横薙ぎに一閃を放った。
あの日あの場所で出会いし、名もなき黄泉の剣豪である一人目の師が、教えてくれたものだ。
次に吾は、左の人差し指を剣先で裂き、懐からボロ切れの様な紙を取り出すと、そこに押し当てる。
そして、ソレを顕現させた。
「何ぞ、何ぞそれは!」
「ぁ、物怪だ。奴は本当に黄泉の国から甦ったんだ.....」
直後、現れたのは鎌を持った異形。皮膚は爛れ、ボロ切れを纏った骨の様な、肉付きの無い男のような姿であった
吾の二人目の師、古の陰陽師が言うには、吾の気は陰気、無限の負を司るのだと。
その後に吾は、人差し指を口に当て、負の陰気を溜める。
「吾が願うはすべての負を司る死神の顕現、死にたもうた神が欲するは己の体のみ。吾が身を贄に、死にたる神を現世に御招き致す。っ、ご、ば.....ぐッ.....死を、奴に死を願え願え願え願え願え――」
相変わらず痛い、凄く痛い。だがな、吾の悲願の為には、この苦痛など何ということはないのだ。
『――ワレヲ呼ビ賜ウタカ?』
口から血を吐きながらも、呪言を唱えつづけると、頭の中に洞窟の暗がりから声を放った様な、遠く恐ろしい声が響く。
「.....後はお願い致しまする」
だが、吾には頼む事しか出来ぬ。
悲願の為ならば、幾度も我が身を費やそう。
『ヨカろウ』
――物言わぬ陰気の骸の眼に昏い光が宿り、闇夜を照らす。
『ウヌノ気ハ真ニ美味デアッタ』
「よしなに頼み申す.....」
そこで吾の意識は途絶えた。
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黒兔です。お読み下さりありがとうございました。
恋愛物かバトル物か分からないですが、頑張って投稿してみますので応援よろしくお願い致します。
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ふたりいっしょならば くろと @kuroto1717
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