鋼丸と岩鉄は激しく打ち合い、戦闘開始から道元達から離れていた。

「他の連中と大分離れちまったな。」

鋼丸が呟くと、岩鉄があざ笑う。

「ガハハハ、仲間と逸れて心細くなったか小僧。」

「いや、そんな事無いぜ！むしる1対1の対決にジャマが入らなくていいぜ。」

「け、やっぱり生意気な小僧だぜ。」

岩鉄は槍を振り回して鋼丸に襲いかかり、鋼丸は愛刀"黒鉄"で受け止める。岩鉄は振り回すだけでなく、効果的に突きもしかけてくる。

「どうだ小僧、俺様の槍の味は！」

鋼丸は素早い反応で岩鉄の槍に対応し、愛刀を振り回して反撃する。そして大きな一激が岩鉄を吹き飛した。

「どうだいオッサン、俺の一撃の味は！」

鋼丸が得意そうな顏をする。岩鉄は体制を立て直す。

「まったく、なんて小僧だ。剣技はデタラメなくせに、腕力と素早さだけで、俺とやりあうとわな。すげえ身体能力だな。」

「そう言うオッサンは、ちゃんと習ったのかよ。」

「俺の事か。俺様は元々大阪城の警備隊の練習生だったのよ。」

「それが落ちぶれて山賊かい？」

「落ちぶれたわけじゃないぜ。せっかく力付けても、警備隊に入ったら好き勝手に暴れねえからな。俺様は好きで山賊になったのよ。」

「なんだ、おめーも強いやつと戦うのが好きなのか嬉しいぜ。」

鋼丸は再び愛刀“黒鉄”を振り回して岩鉄に切りかかる。岩鉄は槍で、時に力強く、時に巧に受け流す。しかし、次第に鋼丸が優勢になっていく。

「楽しくて、調子上がってきたぜ！」

そう叫びながら鋼丸が強烈な1激で岩鉄を吹き飛ばす。その時鋭い矢が鋼丸に飛んで

きた。鋼丸が慌てて避ける。

「雷鬼の奴、やっと援護射撃してきやがったか。」

岩鉄が再び鋼丸に襲いかかる。

「オッサン卑怯だぜ。仲間に弓矢で狙わすなんてよ、オッサンも強敵と戦いたくて警備隊辞めたんじゃねーのかよ。」

「バカかてめえ。いつ俺がそう言った。俺様は強くなった分、好き勝手にする為に山賊になったんだよ。強い奴は邪魔なだけだぜ。」

「なんだ、オッサンただの悪党かよ！」

鋼丸も反撃に出るが、時折襲い掛かる雷鬼の矢に劣勢を強いられる。

「さあ、この連携、防ぎ切れるかな？」

岩鉄は豪快かつ巧に槍で鋼丸を追い詰めていく。そこで鋼丸は強引に岩鉄を突き飛ばすと、一機に後方に飛んで距離をとる。

「やっぱ、飛んでくる矢が邪魔だな。」

「小僧、この距離の矢の攻撃だ、どうにも出来ないだろうよ。ガハハハ」

そこに再び矢が飛んで来た。鋼丸はその矢を躱すと、左手で足元の大きな石を掴み振りかぶった。

「おい！その石投げて反撃かい、そらムリだぜ！」

岩鉄が言い終わる直前に、鋼丸が勢いよく投げた。石は凄まじい勢いで飛んで行き、木の上から攻撃していた雷鬼を直撃した。

「よし！当たった！」

鋼丸はガッツポーズをすると、すぐさま岩鉄の方を向く。

「邪魔者が居なくなったところで、遠慮なくテメーをぶっ飛ばすぜ。」

岩鉄は呆れながら

「全く、デタラメな小僧だぜ。しかし、飛んでくる矢が無くなったでけで俺様に勝てると思ったなら、それは検討違いだぜ。」

そう言うと同時に、物凄い勢いで槍での連続突きを繰り出してきた。鋼丸は愛刀"黒鉄"で受け流していくが、徐々に後退していく。

「テメーと違ってこっちは才能の上に技術を身に着け、実戦を積んできたんだよ。ただ力任せに振り回すだけで勝てる訳がないだろう。」

岩鉄の言葉に鋼丸がニヤと笑う。

「そうとも限らないぜ！」

鋼丸は岩鉄の槍を低くかがんで躱した。すると、槍が引くよりも早く愛刀“黒鉄”を疾風のように振り上げて、岩鉄の槍を弾き飛ばした。

「なに！！」

岩鉄は槍を弾き飛ばされて痺れた左手を押さえながら痛々しい顏をする。

「全く、デタラメな奴だよ、てめーは。」

鋼丸はドヤ顏で刀を構え。

「覚悟しな、オッサン！！」

鋼丸が渾身の一撃を岩鉄に叩き込む。岩鉄が後方に吹き飛び仰向けにぶっ倒れた。

「ぐうう、鈍らのおかげで命は助かったか。げほ！」

鋼丸の愛刀“黒鉄”は刃が傷だらけのおかげで、岩鉄は肋骨はやられたが、なんとか一命はとりとめたようだ。

「俺の愛刀を鈍ら扱いとはひでーな。」

鋼丸は顏をあげると

「まだ、あっちはやってる様だな。よし、助太刀にいくか！」