枯れない薔薇色〜成美の恋〜
のこのこ
第1話 蕾み始めた薔薇色の日々
「ねぇねぇ、薔薇って漢字で書ける?あたし、書けるんだよ。えらいでしょ。ねぇねぇ、醤油かける?」と成美は、いつものように無邪気な笑顔で尋ねてくる、私の高校時代からの友人。
彼女はいつも太陽のような存在で、周囲を明るくしてくれました。でも、その笑顔の裏に隠された複雑な感情に、私は気づきました。
成美は、現在、誠という男性と付き合っています。誠は優しくて思いやりがあり、周囲からも羨ましがられるカップル。
二人の恋愛は、まるで温室で大切に育まれて蕾み始めた薔薇のようでした。
純粋で美しい。
しかし、その根っこには、過去の恋愛の枯れた薔薇の棘が成美に深く刺さっていました。
ある日、成美から打ち明けられたのは、過去の恋愛でした。前の彼との別れは、彼女にとって大きな心の傷となり、その傷が今の幸せを邪魔していると言います。誠との関係が順調に進んでいるように見えても、心のどこかで過去の影がちらついてしまうようでした。
「私、本当に幸せになってもいいのかな?」
成美は、かつて誠実で優しいと信じていた彼との関係で心に深い傷を負いました。
彼との日々は枯れた薔薇色のようでした。棘が心に突き刺さったように、痛みは深い悲しみとなっていました。
それは、ある穏やかな日曜日の午後、いつものように二人が公園で過ごしていた時のことでした。
「ごめん、もう一緒にいられないんだ」
彼からの、予想だにしなかった言葉は、まるで晴天を突く雷のようでした。理由は、ただ一言、「気持ちが変わった」とだけ告げられ、成美は言葉もありませんでした。
それまで、二人は毎日連絡を取り合い、将来の話をしたり、一緒に暮らすことを夢見ていました。彼の言葉は、成美の心を打ち砕き、深い絶望感に陥れました。
数日後、成美は彼の友人から、彼が新しい彼女と仲良くしていることを知り、成美は激しい怒りを感じると同時に、深い悲しみにも打ちひしがれました。
「どうして、あんなに簡単に私を捨てられるの?」そう自問自答しながら、成美は夜ごと涙に暮れました。彼の優しさや誠実さは、全て嘘だったのでしょうか。それとも、最初から本心ではなかったのでしょうか。その問いは、まるで夜の闇の中に投げ込まれた石のように、いつまでも心の中で波紋を広げていました。この出来事が、成美の心に深い傷跡を残し、誰かを心から信頼すること、そして、深く愛することへの恐怖。幸せな未来を想像することへの不安。これらの感情は、成美の心の奥底に根深く残り、現在の恋愛にも影を落としていました。
それからしばらくして、誠の仕事の関係で、二人はしばらくの間、遠距離恋愛をすることになり、二人の関係を試すことになりました。最初は順調だった二人だが、次第に連絡が途絶え、お互いの気持ちがすれ違っていました。
成美は、孤独を感じ、過去の恋愛の傷が再び開かれたように感じました。
しかし、この困難な状況の中で、成美は自分自身と向き合う時間を持ち始めました。
「過去の失敗からたくさん学んで、今の私がある。だから、過去の自分と今の自分を比べて、どちらが優れているかより、それぞれの経験が今の私を作っているの。過去の私、そして、今の私を包みこむことができるのは私だから、私は、ありのままの私で良いんだ。
私は、私で、良いんだ。」
そう心の中で呟き、彼女は少しずつ変わっていきました。遠距離恋愛の経験を通して、自分自身のことをもっと深く知ることができていました。
そして、再び会った誠との再会は、以前とは全く違ったものでした。
誠もまた、遠距離恋愛を通して、自分の気持ちに改めて気づき、成美に対する愛情を深めていました。
二人はお互いを深く理解し、蕾始めた薔薇が、めいいっぱい薔薇色の日々を開かせようとしていました。
枯れない薔薇色〜成美の恋〜 のこのこ @noname511
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