大会当日
大会当日になった。大会の開始時間は18時、今の時間は8時、まだSNSで中止の話は出ていない
まだ時間はあるが条件を満たした1人を集める時間としては短いと思える
メールを確認すると神威から来ている、最もこのメールは大会開催を決めた時に来たメールだ
(18時までに見つけられないと中止……まぁ関係の無い話だ)
今日はバイトが無い。朝からランク戦に潜ってレベル上げをする
それから時間が経ち15時頃になる
『ムギィ! 緊急事態! SNS見て!』
お茶っ子から短い文でチャットが届く
(うん? SNS、何かあったのかな。もしかして人が集まらなくて中止になったとか?)
とりあえず言われた通りSNSを見に行く、するとタイムラインに大会の話が流れている
それは大会が中止になるという話、しかし、幾つかの投稿の内容を見ていくと妙な違和感を感じる
皆が口を揃えて
『神威がやらかした』
と言っていた。大会の関係者である神威が中止を言ったではなくやらかした、何か問題を起こしたかのような言い方である
それも神威は今日、SNS上で何も投稿をしていない。神威は何も発信していないのにも関わらずその話が広まっている
既にこの話題は多くの人に広まっていて元を追うのが難しい
「これ、どうなってるの?」
お茶っ子に返信をする
『わかんない、さっき見てたらタイムラインに流れてきたんだよ。でもイトちゃんが話の元っぽいの見つけたって』
お茶っ子がメールで送ってきた画像を拡大して確認する
(これは……)
『神威が当日になって突然中止にするって言い始めたらしい。理由は人数が足りないからだって、迷惑だねぇ』
と投稿がされている。投稿主は参加を取り消した中の1人であった
元々参加予定の人が言った言葉という事もあって信憑性があるように見える
実際疑っている人は神威のファンの極一部くらいなものだ
(確かにこれ元っぽいな)
「神威はどう答えてる?」
『神威に伝えたけど返信無し、だから真実分からない』
「そう」
神威の口から真実が語られるまで憶測でしか話せない。しかし、昨日の話からして中止を提案したのは神威ではなく別の人、それも昨日の時点で出てる話であって当日にではない
これら全てが神威のついた嘘と言えばそれ迄だが話した相手はお茶っ子、大会参加者ではあれど重要な関係者では無い、それを考えたら別に嘘をつくメリットはほぼ無いと思える
これが発言力のある人ならともかく、お茶っ子は配信者でもプロゲーマーでもない。神威が嘘で味方にしたとしてもSNSにおいて大した発言力を持っていないのだ
詳しい情報がないかタイムラインを確認する
『へぇ、神威がやらかしたのか』
『3人不参加になった後、実は2人は集まってたってさ。あと1人じゃん』
『調子に乗ってランカーとか集めようとしたからじゃね』
『足りないのはあと1人なんだって、それで中止とか訳分からない』
『まじか、中止かよぉ』
『大会楽しみにしてたのに~』
『話によるとあと1人足りないだけだってさ。神威は何を考えてんだか』
『参加取り消しは前日にはしてあったんだろ? なんで当日に宣言をすんだろ』
『前の大会で優勝して調子に乗ってんだろ』
批判的なコメントが多い
(うん? ……書いてないよね。時間的にこの人か)
「お茶っ子は特に何も言ってないよね?」
『もちろん! 大事な話だから大会については何も言ってないよ! 口止めされてたから! それに今、問題となってるけど私は何も投稿しない!』
僕としてはその口が本当に硬いか正直心配になってきたが今は置いておこう
「神威って今回の問題に関して他の人に伝えてるような事言ってた?」
『うーん、それは無いと思う』
「その心は?」
『下手に広まったらやばいから絶対に広めないでって口止めされてたから』
「なるほどね」
下手に広まれば、これは正確な情報で流れないと尾びれがついてとんでもない話に作り替えられてしまうからだろう
それがSNSの怖いところ
「お茶っ子以外には誰か聞いてた? 会話時に」
『ううん、個人チャットの会話だったから神威から伝えてない限り誰も知らないはず』
神威を問い詰めないと分からない事だらけ、正確な事は言えない
(神威が何かやるとしてもこんな自分の首を締めるような事は考えづらい)
神威は頭の回転が早いタイプの人間だと僕は関わってそう思った。少なくともこんな分かりきった炎上をするような人間では無いと
買い被りすぎかそれとも……
「お茶っ子、他の参加者って誰が居る?」
『誰って?』
「僕も知ってるような知人居るかな?」
『あぁ、ちょっと待ってね! 見てくる!』
前作ランカーも参加している、その中には知人が居るが知人達が参加してるかまでは知らない
『イトちゃんが参加予定だよ!』
「あの人が? 珍しい。わかった、ありがとう」
『連絡するの?』
「ちょっと聞きたい事があってね。最も1人から聞いただけじゃ確定では無いけど」
イトちゃん、お茶っ子がその渾名で呼ぶ人物
先程もちゃっかり名前が出ていた、前作ランカーの人、僕とも関わりがあった
メールを送る
『お忙しい中、申し訳ございません。イトさん、今日開催のライトロード2の大会について少し聞きたい事があります。お時間あれば返信をお願いします』
イトさんは忙しい人だからメールを見れるか分からない
数分後、返信が来る
『今日は珍しく休みの日』
『そうでしたか』
『聞きたい事はSNSで出てる話についてかな。何が知りたい? 中止の件はSNSで初めて聞いたけど』
『そちらではなく、聞きたいのは参加人数です』
『参加人数? あぁ、3人不参加になった件かい? それなら事前に神威から誘える人はいないかって聞かれたから知っていたよ』
『その後に2名見つかった話は?』
『2名? その話は知らないな。見返してみたけど神威からそのような連絡は無い。恐らく参加者には伝えていない』
『なるほど、ありがとうございます』
『力になれたのなら良かった。あぁ、そうだ30分後に神威の配信が始まるそうだよ』
メールでのやり取りを終える
(まだあくまで予想、だけど可能性はある)
「ちょうどいいようなもう少し後に開始して欲しいような……まぁ急ごうかな」
「お茶っ子、神威と繋がってるのは前と同じアプリ?」
『あの時と何も変わってないよ~』
「神威のID教えて欲しい。至急よろしく」
『良いよー、何かやる気だね』
「何、ちょっとした遊戯をするだけだよ」
棚から前に使ってきたマイク付きヘッドホンを取り出してボイスチェンジャーのアプリを起動する
半年以上使っていないヘッドホンとアプリ、ちゃんと動くか分からない
それどころかアプリに関しては使い方を覚えてない
(よし動く、マイクも機能してるね。アプリは……使い方メモってあった、前の僕ナイス)
30分近くかかりセッティングを完了する
「配信中でも気づけよ神威」
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