勇者に銅の剣と100Gしか渡さない王様が奮発してみた
んじゃらもん
第1章 「これではいかん!」
アリアハン城の玉座の間で、若き第十四代国王フレイムは深いため息をついていた。
「銅の剣と、たった100G......これでは、あまりにも......」
玉座に肘をつき、顎に手を当てながら、国王は目の前の報告書を睨みつけていた。そこには直近の勇者たちの消息が記されている。
「さっさと帰ってきた者、街道で商売を始めた者、そもそも旅立ちもせずに隣町で暮らし始めた者......」
「陛下」
老練な大臣のバートが、静かに進み出る。
「またため息をついておられますな」
「ああ、バートよ。このご時世に、我が国はいったい何を勇者たちに与えているのだ? 銅の剣だぞ? 銅の! しかも旅費はたった100G! 宿屋に泊まれば、あっという間になくなってしまうではないか!」
「伝統ある制度でございます」
「伝統? はっ!」
フレイムは立ち上がり、玉座の周りを行ったり来たりし始めた。その様子は、まるで檻の中の獅子のようだ。
「魔王軍の襲撃による被害報告は増える一方だというのに! 我が国の勇者たちときたら......これではまるで観光旅行ではないか!」
報告書をめくりながら、フレイムは立ち止まった。
「......ん? これは何だ?」
「はい。まだこの大陣で修行を続けている勇者たちの報告でございます」
「なに!? 出発から既に数か月......この大陸すら出ていないというのか!?」
バートは穏やかに頷く。
「どうやら各地の道場を回りながら、自力で腕を上げようとしているようで――」
「ああ、待て。この集団、あの時の勇者も混ざっているな」
フレイムは眉をひそめた。
「勇者になりたくないと言いながら、周囲に押されて仕方なくと言っていた。あの青年か」
「はい。物静かな......」
「情けない話だ。勇者ともあろうものが、他人に押されて決断するとは。最初から素養がないと思っていたが、案の定か」
フレイムは報告書を乱暴に机に投げ出した。
「こんな連中に我が国の伝統的な勇者制度を任せているなど、笑い話にもならん! バート!」
「はい、陛下」
「明日から勇者の待遇を改善する。報酬を15倍に増やし、最新の装備を与えよう! 本物の勇者を集めるのだ!」
バートは眉一つ動かさず、ただ静かに答えた。
「......かしこまりました」
その声には、かすかな諦めの色が混じっていた。まるで「また始まった」とでも言いたげに。
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