第2話 日常の一コマ

6月、入学してから二ヶ月が経過したがまだ計画は何も進んでいない。この二ヶ月でいろんなことを試した。


初めはピッキング。家にあった適当な針金を持ってきて屋上に続く扉の鍵にさしてみた。だが所詮は素人、どれだけ挑戦しても少しも回る気配が無かった。ただ鍵の構造について詳しい知識がついただけだった。

さらには挑戦時間が昼休みの間しかないのも原因だろう。放課後は全てバイトに充てているのである。お陰で資金は十分だがこれは迂闊だったというしかないだろう。


次に考えついたのが、シンプルに鍵を盗むというものだ。ただ鍵は職員室にある。先生の目が多く一筋縄ではいかない。先生の手伝いとして戸締りをする機会を窺っているが難しいだろう。


もう一つ考えてはいるのだがまだルートが確立していないため実行は後になるだろう。


なにも事態に進展がないまま今日も学校に向かう。


_______


「またか〜」


下駄箱には手紙が入れてある。中学の頃からずっとだ。何故か同じ中学のやつが多かった。やっぱり噂が先行してしまっているのだろう。


『中学から続くなんてとんだ迷惑な愛だな』


などと皮肉も言ってみる。虚しいだけだ。早急に目的の達成をしたいな。


教室に着くと一斉に視線を集める。それがたまらなく嫌で目を逸らし、自分の席につく。幸い席は端なので自分の世界に入れる。


「久しぶりだな、体調は良くなったか?」


体調...そっかそういう設定だっけ。そう思いながら返事を...名前なんだっけ、まあいいや返事を返す。


「ああお陰様でな、気温の変化にやられて風邪を引いただけだ」


「そっか、それならいいんだ」


そこでこいつは真面目な顔で言った。


「なあ、何か悩み事とかないのか。何というかお前からは思い詰めているような感じがするんだ」


なるほど、鋭いな。すると計画に誤算がつく可能性がある。やっぱり決行は早めにしたほうがいいか。


「別に何も問題はないよ。元気いっぱいだ」

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高校の屋上 渾天儀 @odorimoji

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