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「ねぇ、紺野降ろしてよ」
「あ、苗字呼びなの?まぁいいけどさ」
さっきは全然降ろしてくれなかったのに、今度はあっさりと私を降ろしてくれた。
その表情がさっきよりも輝いていたことには突っ込まないでおこう。
やっぱこいつ掴めないや……
ストン、と降りるとぐーっと伸びをしてからリコの方へ振り返った。
「……メイちゃん!無事で良かったよぉ!!」
安心したように、嬉しそうに笑うリコを冷たく見下ろしてしまう。
ぽろぽろと大きな目から零れる涙さえ今の私にはただ鬱陶しくて。
今にも泣き崩れてしまいそうに震えるリコを、慌てて駆けつけた優也が優しく抱きしめる。
ーーあーあ。優也の馬鹿
そんな風に抱きしめてしまったら今までの私の我慢や努力は水の泡じゃないか
もはや呆れて苦笑していると、冷たい視線に気が付いた。
「なに?紺野」
「……なにこれ」
明らかに不機嫌そうな顔をする紺野は、抱きしめ合う二人とそれを優しく見守るメンバーを見た。
「……見たまんま」
そういえばここに来て初めて笑ってる以外の顔したな、なんて思っていると
「意味わかんないんだけど」
低い低い声で呟いた。
だよね、と心の中で答えて紺野に向き合う形で立つ。
周りはそんな私達に気付かない。
それ程までにハッピーエンドの大円団。
何も解決はしてないけれど。
「見ての通り、青龍の大切なものは彼女。分かるでしょ?私なんて攫ったところで紺野達は得しないよ」
残念だったね?
そうやって笑うと紺野は顔を歪めた。
「……なにそれ」
「飽く迄私は彼女を守る身代わり。私に何かあれば迷惑をかけるだけなの」
余計に分からないという表情をする紺野から目を逸らし、微笑み合う彼等を見つめる。
まぶしい、まぶしい
「私を守るのは義務感からきてるから。本当に守りたいのは彼女」
その証拠にほら、青龍は誰一人として私達に気づかないでしょ?
そうやって笑うと、紺野がまた私を抱きしめた。
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