カモミールの哀歌

鏡花水月

第1話 きしょい

私は真面目なんだと思う。

だから授業中にうるさくするやつは嫌いだ。

面白い子はよかったけど、つまんないヤツはうるさいだけだからほんとに嫌い。


、、、極め付けはこの気色悪い※ビアンバカップル。相沢みゆと姫城ゆい。

   ※ビアン・・・レズビアンの略。女性の同性愛者を指す。

「みゅぅぅ、、、♡」

「んぅなぁに、ひめぴー♡」

授業だからイチャイチャするな。当たり前のことだから、もちろん先生たちは注意してた。

けど「多様性を否定するなんてひどぉい」の一点張りで、聞く耳がなかった。

腐ったヤツが多いのか、授業がだるいだけなのか、他の生徒もそれに加担するもんだから、もうどうしようもなくて。

ほとんどの先生は注意するのをやめてしまった。

「うううぅ〜しゅちぃ♡」

「ふふ、かわいいね。ちゅ」

そう言って相沢が姫城にキスをする。


「お"ぇ"」


私は思わずえずいてしまった。

途端に周りから冷たい目線が向けられる。

ああまた言われてしまう。私は"普通"なのに、、、

「は?wきっしょぉw」

そう言って近寄ってきたのは、このクラス、いや、この学年の女帝こと四宮だった。

「星野?いまさ、えずいたよね?えwお前の方がきしょいんだけど」

うるさいうるさいうるさいっ。私はきしょくなんかない!

あいつらよりもよっぽど"まとも"なんだよ!

でももちろん女帝相手にそんなこと言えなかった。


「だってお前さ、オカマじゃん。」

「ちがう!!!!!!!!」

私は咄嗟に叫んでしまった。


言ってしまった。しかもこんな大声で。終わった。

私がこんなに必死になっているのに、彼女の心は一ミリも揺れていなかった。

「違うじゃないわよw男子と着替えるくせに。なに?スカート履いてたら女の子になれるとでも思ってるの?」

ちがうちがうちがう、私は女の子なの、だからスカートは当たり前なの!

「ねえ」

女帝が腰を曲げて、縮こまっている私を覗き込む。

「きしょいって言ってんの早く辞めなよ。」

私が恐怖のあまり涙目になると、彼女は「チッッ」と鋭く舌打ちをして自分の席へ帰っていってしまった。

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