第10話 やっぱりいいやつだな

 園田瀬里の事を一言で語るのならば『優秀』だと思う。


「凄いな園田、いつも完璧だな」


 先生たちからの信頼も厚く、サッカー部のマネージャーとしても完璧な仕事をしていると颯太がいつも言っている。

 日向と凄く仲が良く、二人はいつも一緒。


 一周目、僕と園田は会話こそあれど二人きりで話す事はほとんどなかった。四人でいるときも積極的に会話した覚えがない。

 むしろ、二人になることは避けていた記憶がある。けれども今回は違う。


 颯太の事をきっかけによく話すようになっていた。


「今日は日向と一緒じゃないの?」

「先生に呼ばれて後でくるって。颯太は?」

「サッカーの顧問に呼び出されたって」


 たまに中庭でみんなでお昼を食べる。

 今日は日向と颯太がいなかったので、園田と二人だ。

 別々で食べるのかと思いきや、いつものようにレジャーシートを広げ、僕に座るよう促した。


「じゃあ今日は二人ね」


 以前の彼女とは違う。一体、何が変わったんだろう。


 僕から見て園田は少しだけ周りから浮いている。

 もちろん彼女が悪いわけではなく、あまりにも出来すぎているからだろう。


 二年生の学年テストでも確かトップだった気がする。さらに気が強くて物おじしない。

 それが人を寄せ付けていないのと、園田自身も積極的に関わろうとしているのを見たことがなかった。


 でも日向とはずっと仲がいい。


 ちゃんと聞いたことがなかったな。二人が仲良くなったきっかけ。


「そういえば小野寺に聞きたいことあったんだけど」


 すると突然、お弁当の蓋を開けながら園田が言った。

 淡々としていて、少しだけ圧がある。一体なんだろう。


「聞きたいことって?」

「もしかして兄弟いる? 弟とか妹とか」

「いないよ。……なんで?」

「なんとなく。たまに私たちにもそんなふうに接してるみたいに思うときがあるから。年下だと思われてるような、そんな感じ」


 園田の言葉に体が少しだけこわばってしまう。

 彼女は鋭い。観察力があるというかなんというか、人をよく見ている。


「そうかな。僕からすれば園田のほうが大人っぽいけど」

「私が? それは笑える。誰よりも子供だよ。本当に」


 けれども彼女は真剣な顔つきでそう言った。


「そんなことないと思うけど。いや、確かにそうかも。タコさんウインナーだし」

「え? い、いやこれはその!? 妹が……作ってほしいっていうから……」


 いつもと違い珍しく赤面する園田。こんな一面もあることをはじめて知った。


「妹いるんだ。もしかして手作りなの?」

「そうよ。弟もいるわ。二人とも小学生だから結構離れてるけど。両親が忙しいから私が作ってる」


 颯太の事もだが、本当に知らないことばかりだ。


 一周目の時はわからなかったけれど、今は母親に凄く感謝している。

 毎日お弁当を作ることも、とても大変なことだ。


「凄いな園田って。成績もいいし、料理までできて」

「別に何も凄くないわ。むしろ、あなたのほうが羨ましい」

「……僕が? 別に成績もこれといっていいほどよくないけど」


 すると園田がくすりと笑う。


「知ってる? 颯太も日向も、いつもあなたの話ばかりなのよ。都希はいいやつだ。都希くんと話してると楽しいって。ちょっと妬いちゃうくらい」

「……そうなの?」

「人は、人に好かれることが一番よ」


 そんな事を言ってくれてるとは思わなかったので、素直に嬉しかった。嬉しかったけれど、園田は少し寂し気だった。

 それとなく颯太に尋ねてみたことがあるけれど、園田は一年生、二年生とともに仲良くしている人は日向以外にいないという。

 マネージャー同士の集まりでも、必要なとき以外は関わらないようにしている。


 しかし僕は、園田は人が好きだと思っている。

 些細な変化にも気づくし、颯太の気持ちにも気づいていた。


 そして僕のことも。


 もう少し、彼女の事も知ってみたい。


「やっと終わったぜ。昼休み中なのによお」

「お待たせ。ごめんね」


 ほどなくして颯太と日向がやってきた。

 そして僕は、とんでもない話を聞く。


「……そうだっけ?」

「いつもそうだろ? 中間テスト早いよなうちの学校。くぅ、どうしようやべえぜ……」


 頭を抱える颯太。

 再来週、中間テストがあるということだ。

 

 そう言えば授業中、先生がここテストに出るぞ、なんて言っていたような気もする。

 まだ先だと思って聞き流していたかもしれない。


 そして僕も内心焦っていた。

 大学でも勉強はしていたけれど、内容が全く違う。

 そもそも一周目のテストの成績もそんなに良くなかった気がする。

 本気で勉強をはじめたのは夏休みが明けて受験シーズンになってからだ。


 ずっとほかの事ばかり考えていたから、なんて言い訳にはならない。

 ちゃんと、勉強しないといけない。


「颯太はわかるけど、小野寺もなんだか焦ってない?」

「……そう見える?」

「都希くん、テスト、そんなに不安なの?」

「ちょっとね」


 日向の純粋な瞳が突き刺さる。すごく成績が悪かった、というわけではないけれど、突然舞い戻ってきたのだ。

 これで成績を落とすと後々不安になる。


「だったら、みんなで勉強会でもする?」


 するとそのとき、園田がそんなことを言った。驚いて顔を向ける。

 声が大きかったのは颯太だけれど。


「ま、マジかよ!? 瀬里、いいのか!」

「全員がそうしたいならだけど。日向は?」

「私は大丈夫だよ。一人で勉強するよりみんなでした方が捗ると思うし。都希くんは?」

「僕も不安だったから嬉しいよ」


 一周目は勉強会なんてなかった。

 そもそも園田が発端になることが珍しい。


 チャイムが鳴って、教室へ戻っていると、園田が声をかけてきた。


「日向ともっと一緒にいたいんでしょ。話しててわかるわ。これは貸しね」


 ああやっぱり、園田はいいやつだな。


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