瞳に燈を灯す少女
@ruca0525
1頁『出会い』
数百年前、世界に『灰』が溢れ侵食され始めた時。それと同時期に神話にのみ語られていた魔術に目覚める者が現れだした。だが世界は魔術に目覚めた者『魔女』に原因があると思い込み魔女狩りを始めた。魔女を狩っても『灰』の侵食は留まるところか拡散を加速させていった。そして世界は崩壊した。そして魔女達も表舞台からその姿を消した。
ーそれがこの世界の結末であり現状ー
僕が今来てるのはウルスフィスト国。その跡地だ。ここは特に汚染が酷く普通の人が対策なしには活動することができない。そんな死の象徴と成り果てた地。僕がなぜそんなウルスフィストへ来て、平気なのか。それは僕も魔女だから。
僕が魔術に目覚めたのは今から20年前の冬。孤児だった僕は生きることすらやっとな汚染環境で生活していた。そんな中僕は凍死寸前まで衰弱していたとき声が響いた。
「君大丈夫かい?」
「だ…れ……?」
「魔女じゃないのにこんな所にいたの?大丈夫かい?」
「………」
「通りかかっちゃったしなぁ……ま、いっか♪」
そんな声がしたあと僕は意識を失った。次に目が覚めたのは周りの熱さにだった。目を開けると辺りは火に包まれていた。そう、僕が気を失ってる間に魔術が暴走し燃やしたのだろう……。僕は魔女になった…。それからの生活は地獄ではなくなったが苦労した。魔女であるとバレないようにするのが特に大変だった。それでも魔女に理解のある人と出会えたことで安心して生活できる場所ができた。
そんな僕かなぜこんな人が住めなくなった場所に来ているか。それは最近この周辺で魔術が使われたと言う情報が入ったからだ。無論『灰』が多いからそれを対処した魔女の物かもしれないが魔術暴走の場合早く対処しないといけないからその偵察に暇していた僕が選ばれここに来たというわけだ。
「それにしてもここは本当に汚染が酷いね。こんな所に魔女でもない人間がいて魔女に覚醒したなんてありえるの?」
僕はそうボヤきながらも歩を進める。幸いにも『灰』に寄生された魔物は見かけてないから戦闘になる心配はなさそうだった。それでも油断はしない。いつ攻撃されるか分かったもんじゃない。そうして30分くらい進むとかつてはウルスフィストの首都であった【レティウェン】跡に行き着いた。ここは各地にある『灰』の発生源の1つであると同時に初めて魔女が現れた場所だ。だからこそ当時も、今も……魔女が『灰』の原因と思われている。
僕は半壊した礼拝堂に入った。ここから『灰』が溢れたと聞いている。中は当時の凄惨な光景を物語っていた。朽ち果てた肉塊や乾き黒ずんだ血溜まり。壊されたステンドグラスとあたりに散らばるその破片達。辺りを見回しても誰かいるとは到底思えたい状況。
「こんなとこにほんとに魔女がいるのか……」
「ギャァァァァァァン!!」
突如として耳を劈く咆哮が上がる。私の目の前で。そして山積みとなっていた瓦礫の中から微かに赤黒い光が漏れ出したかと思うと瓦礫が揺れだし、吹き飛んでいった。幸いにも大きな瓦礫が僕に飛んでくることはなかったが細かなものが飛んでき頬や腕などを掠めていった。僕は慌てて礼拝堂から出て物陰に息を潜めた。
「ど…ドラゴン級……」
『灰』に侵さたれた魔物は種や個体名は付けられておらず○○級と称されている。簡単に言えば小型の物がゴブリン級、中型がオーク級、大型がオーガ級、獣型がウルフ級、特大型がドラゴン級と言った感じだ。もっと言うならここから派生した植物型のフラワー級と侵食魔物を生み出すマザー級がいる。
(と…とりあえず距離を取らないと……僕なんかの力じゃ歯が立たない)
ドラゴン級。文字通りドラゴン、もしくはドラゴン並に大きな侵食魔物の呼称。僕みたいな魔女になって50年も生きてない奴が戦って勝てる相手じゃない。例外も多いが魔女の力は生きた年数に比例する。故に魔女になってから20年程度じゃドラゴン級なんて到底倒せない。
「ギャァァァァァアァァァァァァン!!」
僕がドラゴン級から死角になる所を走って逃げていると後ろから咆哮が響き直後瓦礫を壊す音とともに暴風に背中を押されバランスを崩してしまった。暴風の正体は奴が羽ばたいたことによる物だった。
「ど…ドラゴン級なら飛べて当然だよね……」
体が動かない。恐怖が体を支配し思うように動かせないとはよく言うけど、本当にそうだ。自分が死ぬと言うその現実に直面したとき体は言うことを聞かない。時間がゆっくりになる。勿論僕の魔術じゃないし他に誰もいない。
(こんな所で……死にたくない……誰か…助けて……)
いつまで経っても僕の体に痛みは感じなかった。恐る恐る目を開くとそこには漆黒のドレスを着た銀髪の幼い娘が大剣を右手に持ち私とドラゴン級の間に立っていた。『灰』に侵された魔物は知能がなくなり目の前の物を壊したり殺すだけの物になる。それなのに目の前にいるドラゴン級は動きを止め、割って入った銀髪の少女を睨みつけていた。
「あ…あの……」
「アレは…敵……?」
「へ…?」
「アレはアナタの敵?それとも、アナタが…敵?」
「あ、アイツ!アイツが敵!!」
「そう……」
銀髪の少女はそう言うと大剣を構えた……。その瞬間ドラゴン級が襲い掛かってくる。しかしその瞬間開かれた口に大剣を押し込んだ……かと思うとそのままその大剣を振り下ろしドラゴン級を頭から尻尾まで一刀両断した。息絶えたドラゴン級は灰になり消滅していった。
「あ…え……?」
「コレで、いいの…?」
紫の返り血を浴びた顔を振り向かせそう問いかけてくる銀髪の少女。その瞳には黒き燈が悠然と揺らめいていた。僕はそんな少女に安堵と恐怖を覚えた。
ーコレが僕と彼女とのファーストコンタクトー
瞳に燈を灯す少女 @ruca0525
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