薔薇色の小さな家
暗黒星雲
第1話 墓地へ行こう
背後にある枯れ木の林は勢いよく燃え上がっている。これ、結構な大火事じゃないかなあ。火をつけたのは私の魔法なんだけど、罪に問われないのかな??
「ティナ。火事は気にするな。全て試験の運営が悪い」
「でも……」
「ティナみたいな炎の魔法使いをこんな場所で戦わせたらこうなる事は明白だからだ」
「消さなくていいの? ちょっと頑張ったらイケそうなんだけど」
「無駄な事はしなくていい。魔法を温存しておけ」
「うん。そうだね」
そうなのだ。今は勇者選抜試験の真っ最中。余計な事をして肝心な時に力が出なかったら元も子もないじゃない。
でも、目の前にある墓地に入るのは躊躇してしまう。
お墓って、やっぱり気持ちがいい場所じゃないしね。
その墓地は、試験合格の為の到達地点とされてる教会の裏にある。低めの石垣の囲まれた敷地内に、おそらく数百の四角い墓石が並んでいるのだ。目の前の鉄格子の門は内側に開かれており、いつでもどうぞと手招きをしているかのようだ。
「ねえねえ、ウルファ姫。お墓にも罠が仕掛けてあるのかな?」
「当然だ。大規模な
「どうして?」
「ふふっ」
姫は優しく微笑んでから私を指さした。
「ティナ。それは君がいるからだ。死霊魔術で召喚された死体の類は炎の魔法に弱い。つまり、さっきの魔法で全部焼き尽くせば私達の勝ちなのだ」
「そっか。死霊系は炎に弱いんだね」
むふふ。私、姫に頼りにされちゃってる。
嬉しい。これ、最高だよね。
「いくぞ」
「うん」
私は開かれた鉄格子の門を横目に見ながら、姫と一緒に墓地の中へと入って行った。
突然、甘い花の香りが漂って来た。
墓地なのになぜ?
何かの花びらが私達の周りを舞っている。
深紅の花びらが。
墓地に入ったはずなのに、どういう事?
深紅の花びらと眩い光に包まれて何も見えなくなった。
うーん。
また罠に嵌まっちゃったかもしれない。
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