殺人事件が起こりました。異世界で
せんぷーき
第1話 転移
ある公立高校の屋上、その物陰で寝転びながら紫煙を漂わせてる男がいた。
制服姿の彼は読んでいたミステリ小説をぱたりと閉じた。
最後まで読み終わったのか、途中で飽きたのかはわからない。
口から短くなったタバコを制服の内ポケットに入っていた携帯灰皿に入れてまたポケットにしまいこんだ。長い前髪の奥から髪やる気のなさそうな力のない瞳が見えた。腕につけていた時計で時間を確認する、2時間目の授業が終わるまであと少しのようだ。
「3時間目も寝よ」
そう呟くと、どこから持ってきたのだろうか、小さめのクッションが置いてありそこに寝転んだ。
2時間目の終わりまで残り15分いつも通りの光景だった。
5分ほどしてとある声が教室から聞こえた。
『こんにちは』っとノートに黒板で書かれていく文字を書き写すためにノートと黒板をいったりきたりしている生徒達の視線が一斉にクラス中央に向く、そのくらいはっきりと声が聞こえた。まるでクラスの真ん中に大きなスピーカーがあるようだ。
国語担当の教師でありクラスの担任でもある前田莉子が少し怒ったように眉毛を曲げて言った。
「誰ですか?授業中はスマホの電源を切るかマナーモードにしてください」
小柄な彼女が怒っている姿は我儘を言っている子供に見えなくもない。だが彼女の指摘は正しい行いだったが最善だったとは言えない。
『君たちには今から行く世界で生き抜いてもらいたい』
教室中から湧き起こる疑問の声、前田莉子はなにを言っているのかはわからなかった。
教室の床が突然光始めた一瞬で幾何学模様が浮き上がりやがて円が完済した。
「え!?」
『では、
エゴとイドの天秤が保つその均衡にいる者よ
自決の衝動を抱えながら生きる者よ
理不尽なほどに退屈で卑しいほどに求める者よ
残酷な程に善性で慈悲深き故に悪性を持つ者よ
貴様ら全ての可能性を!意地と領事を!力を!弱さを!美しさと醜さを!これから得るであろう希望と絶望を
私に、私に全てをせてみろ!』
部屋の中心から聞こえる声、その主の姿は見えない、だか、その声を聞いた者は極端なほどに釣り上がった口の端で異様なほどに歓喜に満ちた声で言われたのだと本能で感じとっただろう。
床に突如現れた幾何学模様の円、洗礼されたデザインのその光輝く紋様はまるでファンタジー小説に出てくる魔法陣のようだ。
魔法陣から発せられる光量が一気に強くなった。もはや誰一人として、教室内にいた27人誰一人として目を開けられないほどに。
3秒ほど経過した。
目を開けられないほどに強かった光はもうない。
教室にいた27人の姿もない。
こうして例外なく2年D組の教師1人と27人の生徒、全員が姿を消した。
一人の例外もいない。
屋上でさぼって寝ていたとしてもだ。
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