第9話 ビデ、ビデ、流す、おしり、水勢+、・・・
「いただきます。」
モグモグ、モグモグ。
「っお、これ美味しいなぁ。」
学校の屋上でのんびりと食べる昼食。
「今日も世界は平和だなぁ。」
その時、誰かが突然現れるのを感じ取った。
「どうしたの?エンジュ。」
エンジュ、『
僕への情報伝達役を担うことも多く、数少ない僕がすらすらと喋ることができる相手でもある。
「セン様、ネシア様からのご報告が。」
「ネシアから、なんて?」
「王都グローリアの地下が少々きな臭い、調査に行ってくるわ。、だそうです。」
「ふーん、わざわざ報告してきたってことは、ほぼほぼ何かあることが確定してるってことだろうね。」
グローリアの地下か。
場所は絞れているように見えて相当広い。
グロス王国の中心、王都グローリア。
その規模は前世の世界で言うところの東京都全体くらい。
その地下と言われても一体何処のことを指してるのやらといった感じだ。
「今王都にいる『八神官』って何人?」
「『八神官』の方々ですとネシア様含め3名が王都にいるはずです。」
「ネシアともう2人、誰と誰だい?」
「『黒猫』様と『長者』様がおられます。」
「他、王都ではないですが『凡人』様も王国内におられるかと。」
「おー、それはすごい。」
「『八神官』の半分が王国内に集結してるじゃないか。」
僕とネシアによって作られた組織『
最初は二人しかいなかった組織も、今やその数三桁オーバー。
正確な数はネシアに聞けば分かるはずだ。
何故僕が正確な人数を知らないのかって?
一応僕が組織の首領的存在なのだが、その運営はほぼほぼネシアに任せてしまっているからだ。
なんせ僕には人見知りという呪いがある。
新しく入った子とまともに会話することすら出来ない僕に、一体何が出来ると言うのだ。
そして、『
それが『八神官』である。
彼等は一癖あるような人間が多いが、皆優秀な人達だ。
勿論組織の中でも古株のメンバーであり、僕とも仲が良い子達である。
因みに彼等には漏れなく序列と二つ名という実に僕の厨二心をくすぐるものが付いており、内心その枠に僕も入れてくれよと思っているのは内緒だ。
「ま、いいや。報告ありがとう、エンジュ。」
「学校が終わったらエイテンにも寄るから、その時に詳しくは聞くことにするよ。」
「了解いたしました、ネシア様にお伝えすることはありますか?」
「大丈夫、彼女には調査に集中してもらいたいしね。」
「それでは、失礼します。」
そう言って、彼女は速やかに次の場所へ向かっていった。
「いやー、いいね、エンジュちゃん。」
「あの仕事人な感じが僕の厨二心にググっと来るんだよな。」
僕が彼女を一言で表すとするならそれは忍。
自らの仕事を静かに坦々とこなしていく彼女は、組織としてありがたいことこの上ない存在だ。
「さ、午後の授業もある。さっさと食べ終えないと。」
□□□□□□□□
場面は放課後、第二時計台に向かう前に、エイテンと言うコンビニエンスストアに寄ることにした。
「コンビニエンスストア『エイトandテン』通称エイテン、こりゃひどいパクリだよね...。」
何のとは言わないが完全にパクリだ。
ま、僕にそれを言う資格は無いのだけど。
エイテンはここ数年で一気に事業を拡大している企業で、この世界にコンビニエンスストアという商業形態を生み出した先駆者でもある。
小さい店舗ながら日常に必要なものが揃っていたり、何より新作スイーツなどは学生人気も凄まじい。
世界で今最もホットなお店は何?、と街中で聴いて回れば、皆が口を揃えてエイテンと言うだろう。
それほどまでにコンビニエンスストアというのはこの世界にとって新しく、革命的な代物だった。
イヤー、ソンナアイデア、イッタイダレガオモイツイタンダー。
僕には全く関係のない話なんだが、世界を跨いでも商標権や著作権って機能するのだろうか。
さすがに機能しないよな。
いや全然僕には関係ないんですけどね?
うん。
「えっと、エイチキくださぃ...、ぁ、2つ。」
実に情けない注文を終え、会計を済ます。
会計を終えたあとは、トイレを借りる。
そもそもの話、買い物はついでであってこっちが本命だ。
ガチャリ
あ、トイレが本命って別に僕がトイレをずっと我慢してたとかそういう意味じゃない。
『
主な業務内容は世直しであるが、それでも闇の組織のつもりだ。
そうなれば表に堂々と『
よって我々は考えた。
一般企業の店舗に偽装して、自分達の拠点を作ろうと。
全てを説明していては長くなるので省くが、そんな理由もあってこの世にコンビニエンスストアというものが爆誕したのである。
「えーと、ビデ、ビデ、流す、おしり、水勢+、水勢+、おしり、流す、止。」
決められた順番通りにトイレのボタンを押していくと、トイレが個室ごと下降し始める。
こういう指定の行動をすれば行ける隠し部屋とか、厨二病的には滅茶苦茶憧れがあった。
悪の組織の人物が特別メニューを頼んで奥の部屋に進むシーン、あれは男なら誰もが一度はやってみたいと思うはずだ。
だからプレゼンして作ってもらったんだけど、
「なんで、トイレになっちゃったんだろうね...。」
僕はひとつ、ため息をついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます