抜群の読後清涼感。悪意の味がさらに引き立てる!
- ★★★ Excellent!!!
悪意の味がとにかく不快に感じる『男』。この時点で設定が面白いんですが、私はこの話の読後感がとにかく好きです!
主人公の『男』が悪意を不快感のある苦味、渋みなどで感じるのですが、前半部はその苦痛さや雰囲気がこちら側にも感じられ、少し淀んだテイストです。
だからこそ、後半のカタルシスがすごいのなんの。男の行動によって状況が一変、あっとういうまにクライマックスへ向かうのです。
時に、人間の味覚には『抑制効果』というものがあります。魚の肝にレモンをかけてエグ味を味わいやすくする、コーヒーに砂糖が入ることで苦味が楽しめるようになる、味の中和と両立がなされるものです。
この作品は雰囲気の対比がしっかりなされており、その両方を楽しみつつ最後はさっぱりと読み終えることが出来るのです。
長くなってしまいましたが、短編とは思えないほどの満足感を味わえること間違い無し。
是非皆さんもご賞味ください!